科学のつまみ食い 雑記帳
顕微鏡は被写界深度が狭いため、非常に薄い試料で無ければ多くの場合は一部分にしかピント(フォーカス)が合いません。例えば、この科学のつまみオ食いの顕微鏡観察の方法の顕微鏡の仕組みに記してあるように、4倍の対物レンズで27.5μm(0.027mm)ですが、40倍の対物レンズですと0.65μm(0.00065mm)と1ミクロン以下になってしまいます。このため、40倍の対物レンズでグミの燐毛を撮影すると左の写真ように一部分にだけフォーカスが合って、多くの部分はピンボケになってしまいます。このグミの燐毛は大きさがほぼ0.3mm程度ですので全体にフォーカスをあわすのは、ほとんど不可能です。
そこで、フォーカスを少しずつずらした写真を数枚撮影し、それを合成して右の写真のように全体にフォーカスがあった写真を合成します。どうでしょう?上の写真に比べてフォーカスのあった範囲の広い写真になっています。ちなみに、この写真は、顕微鏡のコンデンサ絞りを70%程度に絞ることによって、開口数を小さくし、焦点深度を高めています。そのため分解能は落ちますが焦点深度は倍程度深くなり、1.3μm程度になり、更に、コントラストの高い写真を撮影することができます。このような写真の画像処理を多重焦点合成写真といいます。ちなみに、この右の写真は10枚の写真を合成したものです。