対象天体(何を観測するか?)
さて、では何から観測しましょう?望遠鏡は口径によってその観測対象が限られてしまいます。入門用としては、100mm程度の反射式か70mm程度の屈折式が 適当でしょうから、ここでは、口径100mm程度の望遠鏡を対象として眼視で観測することを考えて見ましょう。口径と焦点距離から、凡そ30倍~200倍程度が現実的な有効倍率でしょう。
【月や太陽】
月、太陽は文句ありません。これだけあれば、かなりのものが観測できるはずです。分解能が1.2秒程度ですから、月の視直径30分から、月の直径の1/1500の距離離れたものを観測できることになります。月の直径が約3500kmであることから月面の約2.3km離れた物体を見分けることができます。 主なクレーターは数十km以上ありますので、観測は容易です。月の地図は色々販売されていますが、自分で月の地図を作ってみるなどという自由研究も良いかもしれません。太陽の場合は、減光することが重要ですから、それなりの準備が必要です。決してそのまま覗かないこと!!失明します。
【惑星】
さて、惑星もいろいろ見ることができますが、高倍率で見ることになるので、大気の乱れが観測に大きく影響を与えます。
水星、金星はその満ち欠けが40倍程度でもよく見えます。 どちらも内惑星といわれ地球の内側にその軌道があります。従って、いつも太陽のそばにくっついているため真夜中に見えることはありませんし、太陽が邪魔で観測できない場合もあります。通常最大離隔の時の夕方か明け方が最も見つけやすいでしょう。大気の条件がいいときには、満ち欠けととも に口径の大きな望遠鏡では淡い模様も見えることがあります 。但し、この模様は非常に薄いので模様と気づかないかもしれません。
火星は接近のときは極冠や大シチルスなどの模様が見えるでしょう。火星の視直径が最大で25秒ですから、理論的には直径の1/20離れた物体を分解できることになります。 逆に、最も離れたときには視直径が3.5秒と10分の1近くになりますから、大きな望遠鏡でもなかなか模様は確認できません。ところで、今年2003年は火星大接近の年です。火星の大きさや模様の変化の観測、順行から逆行へ、そして順行に戻る様子を星図に書き写してみたり、自由研究の題材には困らないかもしれませんね。。
木星は 太陽系で最も大きな惑星で、観測が最も容易で、夜空に見えているときならばいつでも観測できるでしょう。火星のように地球からの距離が余り変化しないので、視直径は最小でも火星程度最大でその倍程度ですから、大気の状態がよければ大赤班以外に縞の細かい模様も確認できるでしょう。また、有名な4つのガリレオ衛星も見ることができます。木星は自転が9時間50分と非常に早いので、その模様の変化を観測したり、衛星の位置を観測したり、一年中、自由研究の題材には困らないでしょう。
望遠鏡を持って最初に観測したくなるのは土星かも知れません。特徴的なのは土星のリングですね。このリングは、40倍くらいの倍率でも見えます。口径40mmの小さな望遠鏡でも、その存在を確認することができます。有名なカッシーニの隙間は80mmの望遠鏡が必要になるでしょう。土星の模様は木製ほどははっきりしませんが50mm程度の望遠鏡で確認できます。土星の輪は傾きが変化していきますので、その傾きに注目して観測をしてみるのが面白いでしょう。
天王星・海王星・冥王星は大口径の望遠鏡でも円盤状にしか見えません。小口径の望遠鏡ではほとんど観測の対象にはならないでしょう。
小惑星は火星と木星の間に存在する半径が数十km以下の小さな惑星で、現在までに3000個以上が命名されています。大きなものは、その位置がわかれば、その存在を確認することができるでしょう。
【星雲や星団】
望遠鏡で覗くと、薄く輝く雲のような天体、それが星雲です。天体写真などで星雲をご覧になる機会も多いと思いますが、実際に望遠鏡を覗いて見える星雲は、非常にみすぼらしく薄いもので、多くの方はがっかりするのではないでしょうか?星雲を見る場合はなるべく口径の大きな望遠鏡で、低倍率で見ることによって、比較的明るく見ることができますが、写真を期待してはいけません。天体写真は何時間も時間をかけてたっぷりと光を蓄積しているのに比べ、目で見るときは、ほんの一瞬輝いているのを見ているだけですから。
星団も同様に天体写真の様には見えませんが、星雲よりはかなりはっきり見えます。無数の星が集まっているのは夜空に輝く宝石のようです。
星雲や星団は非常に多くあります。最も有名なのはメシエという人がまとめた星雲・星団のカタログでメシエカタログと呼ばれます。メシエは彗星の研究をしていたのですが、そのとき、彗星と見間違う星雲・星団をカタログとしてまとめたものが、メシエカタログです。まず最初は、このメシエカタログを中心に星雲や星団を観測していくのがよいでしょう。
【その他】
その他にも彗星、変光星、二重星などが、観測の対象になります。
彗星は地球に近づくときに話題になりますので、そのつど観測します。彗星探しをするのもよいでしょうが、新星探しと同じで根気が必要です。ちなみに、リンカーン研究所がLincoln Near Earth Asteroid Research (LINEAR)という、地球にぶつかる可能性のある天体を本格的に捜しだそうというプロジェクトを実施しています。彼らは多くの天体をコンピュータ解析していますので、非常に多くの天体を発見しています。これに対抗して彗星、新星探しをするのは至難の技ですが、日本では多くの方が新星、彗星探しをしています。
変光星はその明るさが変化する星で、その明るさの変化を観測するのがよいでしょう。観測の方法は近くの明るさの変わらない星を基準に観測をし、明るさの変化の周期等を求めます。
また、二重星は見かけ上近くに見えるだけの見掛けの二重星と実際に近くにあり、互いに引力を及ぼしあっている連星があります。後者の連星の場合は互いに数年から数百年かけて回っているので、その軌道や周期を観測するのがよいでしょう。望遠鏡の性能は、これらの二重星がきちんと二つに分離できるかどうかで判断できます。