天体望遠鏡の使い方
【取り扱いの基本】
天体望遠鏡は光学機器、精密機器です。丁寧に取り扱いましょう。特に光学部分は手に触れないこと!!また、精密機器であるにもかかわらず、非常に重いです。ぶつけたり、落としたりしないように注意してください。精密機械を壊すどころか、怪我をしてしまうこともあります。
【組み立て】
順番としては、組み立てながら設置します。ねじなどの締め付けがゆるいと天体をうまく導入できなかったり、天体を追っているときにずれていったりします。
【架台の設置の仕方】
設置場所は、明かりのないなるべく暗く、空が広く見える場所、石やでこぼこのない平らな場所、舗装してあるといいですね。
(1)経緯台
経緯台は、高さと方位をあわして星の方向に向けますので、感覚的に判り易いです。但し、動く星を追うためには高さと方位をこまめに調整しなければなりません。
経緯台の設置は基本的には、ガタガタしないところに、架台が水平になるように設置します。
次に、経緯台の軸を固定してあるクランプを緩めて、鏡筒を前後に動かすことによって鏡筒が水平を保てるようにバランスを取ります。
経緯台をきちんと水平に設置し、バランスさえ取れていれば、あとは、方位軸(水平)、高度軸(上下)に動かして天体望遠鏡を観測したい天体に向けるだけです。
私の所有しているLX200GPS-30は経緯台の望遠鏡です。
(2)赤道儀
赤道儀は、感覚的に動きがつかみにくいですが、きちんと設置すれば、極軸を回転するだけで星を追うことができます。これは、右の図のように地球の自転軸と赤道儀の極軸を一致させることで、地球の自転による星の回転(日周運動といいます)を極軸の回転で相殺することができるからです。
では、どのように設置すればよいでしょう?
まず、ガタガタしないところに、架台が水平になるように設置するのは、経緯台と同じです。
また、鏡筒のバランスをとるのも一緒ですが、方法は若干異なります。例えばドイツ式赤道儀等はバランスウェイトがついています。鏡筒を前後させてバランスを取るのは赤緯軸のバランスで、赤径軸は、バランスウェイトを前後させます。どちらのバランスをとる場合にも、経緯台と同じように各軸のクランプは緩めておきます。
バランスがきちんと取れたら次は極軸を調整します。北極星が見える場合は極軸の方位を北に向けて設置し、極軸の角度はおおよそその土地の緯度に合わせます。極軸望遠鏡がある場合には、それを覗いて所定の位置に北極星が入るように調整します。
私の所有しているポラリスR100はドイツ式赤道儀の架台です。
(3)自動導入機(自動追尾)
最近は自動導入期が増えています。経緯台、赤道儀どちらでも自動導入機があります。自動導入期の設置も基本的に経緯台や赤道儀と同じですが、架台にコンピュータが載っていて設置後、初期設定を行うことにより自動的に望遠鏡が天体(星)の方向を向きます。
私の所有している経緯台のLX200GPS-30は自動導入望遠鏡です。
【天体を導入しよう】
(1)天体が眼に見えるとき
空が真っ暗で理想的な場合には、人間の眼には6等星くらいまで見ることができます。惑星ならば天王星が見えるかどうかというところでしょう。惑星などの眼に見える星の場合はその導入は比較的簡単です。
まず、望遠鏡の鏡筒を大体見たい星の方向へ向けます。このときは、経緯台や赤道儀のクランプを緩めて自由に動くようにし、望遠鏡などを覗かないで大体の方向を決めます。
次にファインダーを使います。ファインダーを覗いたり、望遠鏡を外から見たりして、ファインダーの視野に天体が入るようにします。ファインダーで天体が見えたら、架台のクランプを締めて、微動装置を使って、ファインダーの中心に天体が来るように調整します。
次に、最も焦点距離の長い接眼レンズを望遠鏡に取り付け、望遠鏡を覗きます。目的の天体が視野に見えるはずですが、見えない場合にはファインダーの中心と望遠鏡の中心があまりあっていないのでしょう。その時は望遠鏡を覗きながら、微動装置を動かして視野に星が入るようにします。視野に入ったら視野の中心に天体がくるように微動装置を動かします。
(2)天体が眼で見えないとき
空の透明度が悪かったり、夜中でも空の明るい都会等では、6等星までは眼で見えません。このような時はどのようにして天体を望遠鏡に導入したらよいでしょう。基本的には明るい星を基準にして暗い星を導入していきます。
経緯台の場合は眼に見えない星を導入するのはかなり難しいです。基本的には恒星図等で目的天体(見たい星)の近くに基準天体(その近くの眼で見える明るい星)を調べ、基準天体を導入します。なるべく倍率の低い(視野の広い)接眼レンズで、その基準星と恒星図を見比べ方向を定めて、目的天体を探していきます。このとき、望遠鏡は恒星図と上下左右が反対であることに注意してください。
赤道儀の場合も基本は経緯台と同じですが、経緯台に比べ楽です。恒星図等で目的天体と基準天体の赤経と赤緯を調べ、二つの星の赤経と赤緯の差を計算します。次に基準天体を導入し、赤道儀についている赤経環と赤緯環の値を読みます。そして、先の求めた赤緯と赤経の差の分だけ、赤道儀の微動装置を動かします。赤道儀の架台の極軸が正確にあっていれば、目的の天体が望遠鏡の視野に入ってくるはずです。
(3)自動導入装置がある場合
この場合は、非常に簡単です。初期設定さえきちんとされていれば、星をコンピューターやコントローラーで選択するだけで、天体の方向に望遠鏡が向いてくれます。
【ピントの合わせ方】
ピント合わせは簡単なようですが、慣れないと意外と手間がかかります。ピント合わせは、ドローチューブや主鏡の移動で行います。目的の天体を導入する前に明るい天体で大体のピントを合わせておくとよいでしょう。最初は低い倍率の接眼レンズで、徐々に倍率を上げていきます。接眼レンズを交換するたびにピントの調節が必要になってきます。ピント合わせのときは、どうしても望遠鏡に触ってしまいますから、望遠鏡とともに視野がゆれて見にくくなります。少しずつピントをあわせます。屈折望遠鏡やカセグレン型の望遠鏡などでは天頂プリズムを使用すると覗きやすくなります。
【観測】
あとは、天体を観察したい倍率の接眼レンズを取り付けて観察します。
経緯台の場合は天体の移動にあわせて高度と方位の両方の微動装置で鏡筒を動かして星を追います。
赤道儀の場合は天体の移動にあわせて赤経軸の微動装置で鏡筒を動かしていくだけです。
自動追尾のできる自動導入機の場合は、経緯台でも赤道儀でも架台が自動的に天体を追尾してくれます。
【観測のポイント】
天体望遠鏡をはじめて覗く時は、月が良いかもしれません。月は観測しやすい上に、いろいろな地形があります。クレーター、海・・・。月の観測をしているうちに、望遠鏡の取り扱い方に慣れてくると思います。月に慣れたら、次は惑星、そして星団などです。順番としては、
月、木星、土星、金星、火星、水星、星団、星雲
という感じでしょうか?
ところで、初めて望遠鏡で月以外の天体を覗いたときはその見え方が期待はずれでがっかりするかもしれません。多くの方は、TVや写真などで、惑星、銀河を眼にする場合が多いと思います。天体写真は、大きな望遠鏡で、しかも露出時間を何分もかけて撮影しています。人間の眼では感じられないようなかすかな光まで写し取っています。
適正倍率があります。恒星はいくら倍率を上げても点にしか見えません。また、惑星でも倍率を上げるとコントラストが悪くなってよく見えない場合があります。最高有効倍率程度に抑えておくことがよいでしょう。望遠鏡でできた像は意外と小さいものです。100倍の倍率で木星を見ると肉眼で見た月くらいの大きさに見えます。しかし、実際にはそれほど大きくは見えません。では、月は肉眼ではどのくらいの大きさに見えるでしょうか?5円玉をもって外に出てみましょう。この5円玉をもって、手をいっぱいに伸ばして、その穴から月を覗いてみてください。月はその穴より小さく見えるでしょう。この様に月はそれほど大きくはないのです。従って、望遠鏡で覗いた惑星もそんなには大きくは見えません。
天候状態にも気をつけましょう。空が晴れていても星がよく見えないときってありますね。これは、大気の乱れによるものです。シーイングがよい(空気が澄んでいて透明度が高い)時でも、上空の空気の流れが乱れていてシンチレーション(星の揺らめき)が大きい時は、月や惑星の模様がゆらゆら揺らめいて、見えなくなります。この様に空の状態によって望遠鏡の見え方は大きく変わってきます。
観測の時季にも注意が必要です。火星など地球からの位置が大きく変わる天体は、観測する時季を選ばなければなりません。遠ざかっているときは模様などは全く見えなくなったりします。地球に一番近づいた時季を中心に観測するとよいでしょう。
恒星図や星図盤などを活用しましょう。天体の正しい位置を知らなければ、目的の天体を探せません。それだけではなく、星の楽しみは、その位置や昔話、ギリシャ神話、星座などにもあります。星を観測するときはよく調べておきましょう。