【分光スペクトルの波長と強度】
さて、このようにして作成した分光器を使用しすると色々な身近な光を観察 できます。これだけでも十分判りますが、このような色を分解した写真のままでは、スペクトルの波長やスペクトルの強度が判り難いので、判りやすくする必要があります。そのためには、スペクトルの波長や強度を数値で表してグラフ化するとわかりやすくなります。そのためにはどうしたらよいでしょう?スペクトルの波長は撮影されたスペクトルの横の位置で判ります。また、スペクトルの強度は撮影された写真の明るさで判ります。従って、これらを基にして分光スペクトル写真を分光スペクトルのグラフに変換し、校正してみましょう。
【スペクトルの強度】
まず、スペクトルの強度補正しましょう。そのためには、スペクトル写真の強度を数値に直さなければなりません。市販には色々な画像解析ソフトがありますので、それを使用するのがもっとも簡単です。しかし、通常はそのようなソフトは持っていないでしょう。フリーウェアでも探すといくつかあるかもしれません。そのようなソフトで輝度を数値化しグラフ化したのが下のグラフです。
これは、自宅の私の机の上にある卓上蛍光灯のスペクトルです。横軸はCCDのピクセル位置を表し、縦軸は相対強度として輝度を積算したものです。これで、紫色の輝線が2本、緑色の輝線が1本、また、オレンジ色の輝線は写真では1本に見えますが、グラフ化すると2本あることがわかります。また、紫色から赤まで少し小高い連続スペクトルになっていることもわかります。このように、写真をグラフ化することによって、情報がより詳しくなります。
【スペクトルの波長】
さて、このようにして作成したグラフの横軸は波長に対応しますが、上のグラフのままでは、CCDのピクセル位置でしか表されません。これでは、今後色々な光を分光したときに基準が無くなってしまいます。そこで、横軸のCCD位置を波長に換算します。回折格子型の分光器は幾何学的な位置によって、その波長位置が決まってしまいます。これは、最初の分光器の作り方に書いてありますが、以下の式で波長と位置を対応付けることができます。 しかし、なかなか素人が作ったものでは計算とはうまく一致しません。そこで、上の蛍光灯の輝線スペクトルの波長があらかじめわかっているので、それを基にして校正します。
蛍光灯は分光器の作り方のページで書いたように中の水銀がアーク放電により発光し、253.652nmの紫外線を放出し、その紫外線が蛍光物質に当たって、色々な色を出しています。しかし、水銀が発光するのはこの253.652nmの光だけではありません。そのほかにも水銀独特の光を発光します。それらは、
紫色の輝線が2本は404.656nm、407.781nmと434.750nm、435.835nmで、
緑色の輝線が1本は546.074nm、
オレンジ色の輝線は576.959nmと579.065nm
となります。
この値と上の式を用いて最小二乗法で計算して校正したグラフが下のグラフです。
グラフの黒字が水銀の輝線スペクトルの実際の波長です。赤字が校正した分光器の波長です。良く一致しています。