顕微鏡観察や顕微鏡撮影した時、ある一部分にピントが合って、その他の部分にはピントが合わない場合 があります。特に対物レンズの倍率が上がった場合には顕著に現れます。これは、顕微鏡の使い方で も説明したように、光の波長をλとした場合に分解能δと焦点深度dは対物レンズの開口数NAと以下の関係にあるからです。
δ=λ/(2・NA)
d=λ/(2・NA・NA)
なので、
δ2=λ/2・d
となります。従って、分解能が高くなればなるほど焦点深度は極端に浅くなっていくことが判ります。 例えば、焦点深度は4倍の対物レンズで27.5μm(0.027mm)ですが、40倍の対物レンズですと0.65μm(0.00065mm)と極端に浅くなります。このような場合焦点距離を少しずつずらして、その焦点のあった部分を合成して焦点距離の深い顕微鏡写真を作ることができます。
【通常の撮影】
右の写真はグミの燐毛を撮影したものです。
撮影データは
対物レンズ Achx40 (NA=0.65、δ=0.42、d=0.65))
接眼レンズ 無し
カメラ *istD SS=1/20 ISO=200
です。この場合、右の写真ように一部分にだけフォーカスが合って、多くの部分はピンボケになってしまいます。この写真からグミの燐毛は大きさがほぼ0.3mm程度と判りますので、0.65μmの焦点深度は大きさに比べて1/500になります。実際はカバーグラスで封入されているので、上から押しつぶされている状態になっています。
右の写真は上の条件でフォーカスをずらして10枚撮影したものです。このようにどのフォーカスでも全体にピントが合うことはありません。
【フォーカス合成】
上のようにしてフォーカスを少しずつずらした写真を数枚撮影し、それを合成するのがフォーカス合成です。下の写真は、上のアニメーションの10枚の写真を合成したものです。どうでしょう?上の写真に比べてフォーカスのあった範囲の広い写真になっています。ちなみに、この写真は、顕微鏡のコンデンサ絞りを70%程度に絞ることによって、開口数を小さくし、焦点深度を高めています。そのため分解能は落ちますが焦点深度は倍程度深くなり、1.3μm程度になり、更に、コントラストの高い写真を撮影することができます。