日食の写真や彗星、流星の写真に引き続き、今回は星野写真です。天体望遠鏡を持っていなくてもカメラさえあればできる天体写真撮影の中で最も簡単です。赤道義を使って追尾しながら星を点像に移す方法がきれいですが、固定撮影でも撮影できます。 例えば、下の写真は固定撮影で10秒露出で363枚のコンポジットをしたオリオン座付近です。固定撮影でもこれだけ撮影することができます。
撮影情報
撮影日時:20012/10/22 2:05-3:35
カメラ:Pentax K-5IIs
レンズ:DA★16-50mmF2.8
ISO:1600、SS=10s、F2.8、f=16mm
363 frames composit
【星野写真って?】
いわゆる、星や星雲星団などを広い範囲にわたって撮影したものです。新星探しには赤道義を使用した追尾撮影で星野写真を毎日撮影して、そのフィルムを比較して新しい星を探したりします。最近はデジタル自動化されていますが、まだまだ、手作業で新星発見をやられている方はいるようです。
【星野写真を撮ろう】
さて、では星野写真を撮ってみましょう。
【準備するもの】
準備するものは、流星の写真を撮ろうで使用したものとほぼ同じで、日食の写真を撮影しようや彗星の写真を撮影しようと異なり、望遠レンズは使用しません。
カメラ
一眼レフカメラで、B(バルブ)やTで長時間露光できるものが望ましいです。最低数秒から数十秒の露光時間が必要です。一眼レフデジタルカメラや一眼レフフィルムカメラを使用します。
レンズ
望遠レンズは必要ありません。どちらかと言えば、明るい広角レンズが良いでしょう。彗星や、日食、他の星々と違って広い範囲を撮影するのが目的ですから、流星の撮影と同じように、できる限り広い範囲をカバーでき、しかも明るい広角レンズが必要です。
三脚
三脚は必須です。ここでは簡単なミニ三脚を使いました。長時間露光には三脚は必要不可欠なのでぜひ用意しましょう。
レリーズ
三脚と同じで必ず必要です、手でシャッターを数十秒も押しっぱなしと言うわけにはいきません。
フィルム・感度
そして大切なのがフィルムや感度です。なるべく感度を高くしましょう。
【固定撮影の限界等級】
さて、撮影です。右の写真は日中に撮影したものですが、写真のようにカメラを三脚に立て方向を定めて固定します。方向は目的の星座がきちんとフレームの中に入るようにしましょう。あとは、適当なときにシャッターを切りましょう。露光時間等は、撮影の目的によって異なります。例えば、星を点で撮影したとか、星の日周運動(星が動いている様子)を撮影する場合など、その用途によって露光時間が変わります。また、レンズの口径によって、写すことのできる星の明るさ(限界等級)が変わります。そこで、固定撮影で星が点像に写る露出時間とその際の限界等級を計算してみましょう。
まず、赤緯θにある星(天体)は地球の自転により1秒間に2π/24h/60m/60s x cos(θ)=πcos(θ)/43200 s-1移動します。また、フィルムの粒子サイズあるいはデジタルカメラのCCD素子の素子サイズをR mmとすると、焦点距離L mmのレンズの1粒子(素子)あたりの画角はatan(R/L) pix-1 となります。この角度以内の移動であれば星はぶれずに点で写るはずです。したがって、固定撮影で星が点像に写る露出時間T sは以下のようにあらわされます。
Ts = 43200 atan(R/L) / π cos(θ)
一方、素子サイズRmmのカメラに蓄積できる星の光量Pはレンズの口径Dmm、露出時間をT sとした場合、D2 x T に比例します。また、レンズの口径Dは焦点距離Lと絞りFからD=L/F mmで計算されるので、光量Pは下のようにあらわされます。
P ∝ (L/F)2 x 43200 atan(R/L) / πcos (θ)
また、星の等級は100倍になると5等級明るくなるように決められているので、光量がZ倍になると等級はYだけ明るくなります。
Y = 2.5 log Z
また、経験上ISO400、R=0.03mm のフィルムで天の赤道θ=0の天体をF=2、L=50mmのレンズで固定撮影すると9.3等級の星まで撮影できることが経験上知られていることと感度は集光効率に比例することから、極限等級Mは
M = 2.5 log ( ISO x (L/F)2x 43200 atan(R/L) / πcos (θ) ) – 6.5
であらわされることが判ります。この式で計算すれば、固定撮影で撮影する場合の極限等級が判ります。
以下に私の持っている短焦点レンズを主体にした限界等級表を上げておきます。
限界等級表 | ISO= | 400 | ピクセルサイズ= | 0.00481 | 赤緯= | 0 | ||
レンズ焦点距離(mm) | 15 | 31 | 50 | 70 | 90 | 135 | 200 | 300 |
点像撮影露光時間(s) | 4.4 | 2.1 | 1.3 | 0.9 | 0.7 | 0.5 | 0.3 | 0.2 |
F値 | ||||||||
1.4 | 6.8 | 7.6 | 8.1 | 8.4 | 8.7 | 9.2 | 9.6 | 10.0 |
1.8 | 6.2 | 7.0 | 7.5 | 7.9 | 8.2 | 8.6 | 9.0 | 9.5 |
2.4 | 5.6 | 6.4 | 6.9 | 7.3 | 7.5 | 8.0 | 8.4 | 8.8 |
2.8 | 5.3 | 6.0 | 6.6 | 6.9 | 7.2 | 7.6 | 8.1 | 8.5 |
3.5 | 4.8 | 5.6 | 6.1 | 6.4 | 6.7 | 7.2 | 7.6 | 8.0 |
4.0 | 4.5 | 5.3 | 5.8 | 6.2 | 6.4 | 6.9 | 7.3 | 7.7 |
4.5 | 4.2 | 5.0 | 5.5 | 5.9 | 6.2 | 6.6 | 7.0 | 7.5 |