空中花粉を観察しよう


【はじめに】
  花粉症の方にはつらい花粉ですが、花粉は顕花植物の花のおしべにある葯(やく)の中でつくられます。花粉は植物の繁殖には欠かせないものです。花粉は受精のためにめしべまで安全に運ばれる必要があります。花粉がめしべまで運ばれる方法は、
 1.風による風媒
 2.昆虫による虫媒
 3.動物による動物媒
 4.水による水媒
等があります。
 花粉症の原因になるスギ花粉等は、このうちの風媒花粉によるもので、その量は非常に多く、例えば、マツ類では1花あたり100万を超えるといわれています。逆に虫媒花粉は量も少なく、付着しやすいように突起や粘着性物質が発達しています。
  風媒花粉は開花期に空中に大量に放出し、それが浮遊し風に乗って運ばれるので、花粉症の原因になっています。特に、スギ、マツ、ブタクサ、トウモロコシ等が代表的なものです。
 さて、このような花粉症の原因になる空中に飛散される花粉を採取してその量を測定してみましょう

【ダーラム型空中花粉捕集器】
imgp5149 空中飛散花粉を採取するために次のものを準備します。ダーラム型空中花粉捕集器、グリセリンゼリー、白色ワセリン、スライドグラス、カバーグラス、顕微鏡、染色液(ゲンチアナバイオレット、メチレンブルー、エオシン)。
  採取に使用するのはダーラム型空中花粉捕集器で、これは右の写真のようなものを自作しました。直径23cmのアクリル板2枚に3箇所の穴を開け長さ10cmボルトとナットで間隔が9cmに成るように固定します。真ん中に下のアクリル板からの高さが2.5cmになるようにスライドグラスを固定できる台を取り付け、クリップでスライドグラスを挟めるようにしたものです。
  設置は、本来なら
 1.近くに障害物になるような高い建物が無いこと
 2.障害物がある場合はその障害物との角度が20度以下、距離が6m以上jあること
 3.周りが囲われている場合はその囲いよりも70cm以上高くすること

等が条件になりますが、一般の家庭でそのような場所はなかなかありません。そこで、右の写真のようにベランダから1m以上突き出して設置できるようにしてあります。

【採取・観察方法】
imgp5150 
空中花粉採取法の実際の方法を掲載しておきます。
1.スライドグラスに白色ワセリンを塗ります。
  手の汚れが付かないようにサランラップなどを指に巻いて塗ると良いでしょう。
2.スライドグラスをダーラム型空中花粉捕集器にセットします。
  セットした時刻を記録しておきます。
3.24時間後にスライドグラスを回収します。
 通常1日の飛散量を調べますが、花粉の少ない時期は長くしても良いでしょう。
4.花粉を染色します
 花粉を他の粉塵などと明確に区別するためには染色したほうが良いです。
  花粉を染色するのに都合の良い染色液は
    通常花粉染色には、ゲンチアナバイオレットが使用されます。
  手に入らなければ、メチレンブルーエオシン等でも良いです。
  メチレンブルーが比較的手に入りやすいでしょう。
  予めグリセリンゼリーを作るときにこれらの染色液を混ぜておけば、染色の必要はありません。
5.グリセリンゼリーで封入する。
  通常のグリセリンゼリーを使用した方法と同じです。グリセリンゼリーを2x2x2mm程度スライドグラスの上に載せ、暖めて、ゼリーが溶けたらカバーグラスを掛ける
6.顕微鏡で観察する。
  カバーグラスの大きさは通常1.8×1.8cm=3.24cm2なので、花粉のかずを数え、3.24で割れば、単位面積あたりの花粉の飛散量がわかります。10倍の対物レンズと10倍の接眼レンズで観察するのが良いでしょう。

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