【科学のつまみ食い】 【標本作成について】 【季節変化】 【顕微鏡写真】
フクロワムシ ツボワムシ フタオワムシ ケンミジンコ ケンミジンコの雌(卵) ケンミジンコの幼生
ミジンコ ミジンコの正面 ゾウミジンコ ミジンコの卵 ケイソウ 不明

千鳥が池のプランクトン

by I-satto@03/06/14

顕微鏡写真

フクロワムシ Asplanchnidas

 輪形動物門 輪虫綱 単性亜綱 遊泳目フクロワムシフクロワムシの一属で、体が透明でやわらかいために、ホルマリンやアルコールで固定すると縮みやすいので、【標本作成について】で述べた麻酔をする方法が使われることが多いようですが、ここでは、そのままホルマリンで固定しています。この輪形動物門 輪虫綱の研究はまだ十分に進んでいません。それは、上に述べたように固定すると縮んで種別を判別するのが難しくなるためです。実際に分類する場合は咀嚼板といわれるいわゆる口のようなもので分類します。以下の写真ではそこまで詳しいことは判りません。ところで、単性亜綱というのは文字通り、単性生殖でも増えることが可能ということですが、雌に比べ雄が小さいことと、環境が悪ければ、雄無しで子孫を増やすことができるために、雄の発見されていない種も多いようです。遊泳目はいわゆるワムシ類のことで0.3mm程度の大きさで、雌雄異体です。普通、体は円筒形で、頭・胴・脚の三部から成り、頭部の前端に繊毛や触手を持ち遊泳することが知られています.ここでは体が透明で体内が見えることと、甲が確認できないこと、及び形状からフクロワムシとして紹介していますが、他のワムシでも顕微鏡で観察すると透けて見えますし、甲のはっきりしないものも多いです。従って、この分類が確かかどうかは怪しいところです。この遊泳目の中にはフクロワムシ科の他、テマリワムシドロワムシコガタワムシネズミワムシツボワムシハオリワムシミツウデワムシ、ヒラタワムシ、スジワムシ等が知られています。このうち、ヒラタワムシはフクロワムシがホルマリンで収縮した形と 似ているので区別がつきにくいです。従って、ここにはヒラタワムシも含まれているかもしれません。

 T.W.氏より2002/11/16に頂いたコメントによれば、ヒラタワムシは文字通り扁平で,硬い被甲があり,普通に見られる種は形もほぼ円形で,フクロワムシよりだいぶ小さく,ずいぶんと印象が違うそうで、実際にはヒラタワムシとフクロワムシはそれほど似ていないとのことです。ここで、私が掲載した写真のなかには「ヒラタワムシ」 はいないそうです。
ヒラタワムシよりもむしろドロワムシ(Synchaeta)のほうが、似ているとのことで、ホルマリン等で固定した試料では
ドロワムシは側触手を引っ込めてしまい,フクロワムシと似た大きな袋状に見えるそうです。また、ドロワムシの中には500μm以上に大きくなる種がいて、更に注意が必要とのことです。ドロワムシは固定した試料でも体の後端に小さなあしゆびが見え、区別できることもあるが、見えない場合は袋ワムシとの区別は困難だそうです。T.W.氏は、この様に固定した試料ではドロワムシとフクロワムシが区別し難いにもかかわらず、誰も指摘していないことが不思議だそうです。

 T.W.氏にはこのコメントとともに画像を頂きました。その画像を以下にご紹介いたします。

ヒラタワムシ 収縮したドロワムシ Asplanchna priodontaの咀嚼板
フクロワムシ:ドロワムシ:ヒラタワムシ Nostoc

by I-satto@2003/07/01

 倍率400(40x10)で、シャッター速度は1/4秒です.ASA100のモノクロフィルムで撮影しています。体内が透けて中が見えるのがわかりますが、きちんと構造を説明できるほどではないです。大きさは、直径207μm、高さ283μmです。
 T.W.氏によれば、この写真だけでは断言できないが、これは両側に側触手らしきものが見え,ドロワムシの可能性が高いとのことです。もう少し、鮮明な写真だと判断がついたのかもしれませんね。
 ドロワムシはドロワムシ科ドロワムシ属で頭の部分が盛り上がっていて足(触手)には2本の爪があります。大きさは200μm程度です。

by I-satto@2003/07/01

 こちらは100倍(10X10)です。ASA32のモノクロフィルムで1/2秒の露光時間で撮影しています。こちらも丸く袋状で中が透けて見えています。正常な状態では右上に咀嚼板が見えるはずですが、ホマリンで固定したため、咀嚼板のある口の部分が縮んでしまったと思われます。大きさは、直径299μm、長さ404μmです。
 T.W.氏によれば最も普通に見られるAsplanchna priodonta(フクロワムシで見られるのはたいていこの種)は,図体がでかい割には咀嚼板は小さいため,この写真の倍率では咀嚼板は小さすぎてよく見えないとのことです。生きたフクロワムシでも他の器官に隠れ,観察は困難だそうです。フクロワムシの中にはAsplanchna sieboldiという咀嚼板の大きい種は、体の外からでも咀嚼板が観察できるそうですが,いびつな形が特徴的で、ここには見られないそうです。

by I-satto@2003/0701

 こちらも100倍(10X10)です。ASA100のカラーフィルムですがネガが残ってなく、モノクロ写真だけが残っていました。露光時間は1/30秒です。こちらも丸く袋状で中が透けて見えています。正常な状態では左側に咀嚼板が見えるはずですが、上の写真と同様ホルマリンで固定したため、咀嚼板のある口の部分が縮んでしまったと思われます。上の写真より内部が鮮明に見えますが、右下に2〜3個見える丸いものは卵かもしれません。大きさは、直径284μm、長さ359μmです。
 T.W.氏によれば最も普通に見られるAsplanchna priodonta(フクロワムシで見られるのはたいていこの種)は,図体がでかい割には咀嚼板は小さいため,この写真の倍率では咀嚼板は小さすぎてよく見えないとのことです。生きたフクロワムシでも他の器官に隠れ,観察は困難だそうです。フクロワムシの中にはAsplanchna sieboldiという咀嚼板の大きい種は、体の外からでも咀嚼板が観察できるそうですが,いびつな形が特徴的で、ここには見られないそうです。

by I-satto@2003/0701

 こちらは200倍(40X5)です。フィルム種別やシャッター速度の記述はありませんでした.こちらも丸く袋状で中が透けて見えていますが、右上が開いています。確実にフクロワムシであるとは言い切れません。大きさは、直径190μm、長さ317μmです。
 T.W.氏によれば、この写真だけでは判らないが、フクロワムシではないかもしれないとのことです。

by I-satto@2003/07/01
 

 こちらは100倍(10X10)です。フィルム種別やシャッター速度の記述はありませんでした.こちらはかなり大きいようで、その大きさは、直径599μm、長さ898μmです。右側に咀嚼板があるはずです。


 

科学のつまみ食い