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顕微鏡観察の方法 |
顕微鏡の仕組み
【はじめに】
皆さん,顕微鏡を使ったことがありますか? 顕微鏡は小さなものを拡大してみるための器械で虫めがねの倍率を大きくしたようなものです。虫めがねの倍率は2〜10倍くらいまでの拡大率ですが、顕微鏡では20倍くらいから1500倍くらいまで拡大してみる事ができます。身の回りの小さな物を観察してみるのは、とても面白いですから、ぜひ観察してみてください。このページは顕微鏡の仕組みや使い方、顕微鏡写真やビデオの撮り方を紹介します。簡単ですので、皆さんもぜひやってみてくださいね。
【どうして大きく見えるの?】
顕微鏡ってどういうものでしょう? ここでは光学式の生物顕微鏡を使用します。私が使用している顕微鏡その他の器材を後で下に紹介しておきますね。
1)虫めがね
皆さんは、虫めがねは使いますか? 小さなものを大きくして観察する道具としては虫めがねが一番身近なものでしょう。では虫めがねはどうして大きく見えるのでしょう?
下の図を見てください.矢印が見たいもの(試料)です。この試料を虫めがねの焦点の位置より内側の虫めがねよりに置きます。そして、目を焦点の位置に持ってきます。その時、明視距離(目の位置から25cmのところ)に虫めがねで作られた像ができ、拡大して見えます。この時、虫めがねの倍率Mは虫めがねの焦点距離をfとしたとき、
M=250/f
となります。即ち、虫めがねの倍率は250を焦点距離(mm)で割った値です。10cm(100mm)の焦点距離の虫めがねの場合には2.5倍になります。
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2)顕微鏡
さて、次ぎに顕微鏡の仕組みです。顕微鏡は簡単に言うと2つのレンズの組み合わせで、小さなものを大きく拡大して観察する装置です。試料に近いほうのレンズを対物レンズ、目で覗く方のレンズを接眼レンズと言います。下の図は顕微鏡の仕組みを図に書いたものです。対物レンズで拡大した像を接眼レンズで更に拡大する仕組みになっています。接眼レンズは、虫めがねの役割を果たしています。顕微鏡の倍率Mは対物レンズの倍率Moと接眼レンズの倍率Meを書けた値になります。即ち、
M=Mo X Me
です。
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【顕微鏡の仕組みって?】
では、実際の顕微鏡はどうなっているのでしょう?下の写真は私が実際に使用している顕微鏡の写真です。25年以上も前に購入したオリンパス製ですが、現役でちゃんと使えてますし、今の顕微鏡と殆ど変わりは有りません。では、写真を使って説明しまよう。
1)対物レンズ
顕微鏡の中で最も重要な部品で、試料の最も近くにあるレンズです。この対物レンズの性能が顕微鏡全体の性能を決めてしまうといっても良いくらいです。ところで、顕微鏡はいくらでも大きく拡大して物を見る事ができるのでしょうか? いえ、そうでは有りません。いくら拡大してもある程度以下の細かいものを見る事はできません。どのくらい細かいものを見る事ができるかと言うのを分解能と言います。この分解能は対物レンズの開口数(対物レンズにNA=0.65などと書いてあります.)と、見ている光の波長(色 λ=0.5μm)によります。赤い光よりも青い光のほうが波長(λ)が短く、より細かいものを見る事ができます。この分解能δは
δ=λ/(2・NA)
で表され、青い光(λ=0.5μm)で40倍くらいの対物レンズ(開口数NA=0.65)の場合で0.38μm程度です。このように、顕微鏡の性能は全体の倍率ではなく対物レンズの性能によります。開口数が大きなレンズほど細かいものを識別する能力である分解能が高くなります。ところで、顕微鏡はピント(焦点)を合わせなければなりませんが、ピントの合う範囲というのが有ります。それを焦点深度といいますが、これも対物レンズの開口数と光の波長で決まってしまいます。但し、さっきの分解能とは逆に開口数が小さいほど一度にピントが合う範囲である焦点深度が大きくなります。この焦点深度dは
d=λ/(2・NA・NA)
で表され、青い光で、四十倍くらいの対物レンズの場合には0.58μm程度になります。特に顕微鏡写真を撮る場合などには、この焦点深度に注意しなければピンボケの写真になってしまう場合があります。
下の表に私が所有している対物レンズの性能表を上げておきます。
対物 レンズ |
Ach x4 | Ach x10 | Plan Apo x10 | PLL x20 | Ach x40 | FlPLL x40 | Ach x60 | Ach x100 oil | PLL x100 oil |
倍率 | 4 | 10 | 10 | 20 | 40 | 40 | 60 | 100 | 100 |
開口数(NA) | 0.1 | 0.25 | 0.32 | 0.40 | 0.65 | 0.75 | 0.8 | 1.30 | 1.30 |
作動距離(W.D./mm) | 18.48 | 6.78 | - | - | 0.61 | 0.49 | - | 0.11 | - |
焦点距離(f/mm) | 28.65 | 16.08 | - | - | 4.33 | 4.29 | - | 1.81 | - |
分解能(μm) | 2.75 | 1.1 | 0.86 | 0.69 | 0.42 | 0.37 | 0.34 | 0.22 | 0.21 |
焦点深度(μm) | 27.5 | 4.4 | 2.69 | 1.72 | 0.65 | 0.40 | 0.43 | 0.16 | 0.16 |
分解能と焦点深度は0.55μmの波長で計算しています。また、X100の対物レンズは液浸型です。
2)接眼レンズ
接眼レンズは目に最も近いレンズです。対物レンズで拡大された像を更に接眼レンズで拡大します。実視野(目で覗いた時の見える範囲の広さ)はこの接眼レンズの視野数で決まります。対物レンズの次ぎに重要な部品ですね。接眼レンズの視野数N、対物レンズの倍率をMoとしたとき、実視野Wは
W=N/Mo
となります。例えば視野数20で対物レンズの倍率が10倍の時、実視野は2mmとなり、これ以上大きなものは一度に見る事はできなくなります。
下の表に私が所有している接眼レンズの性能表を上げておきます。
接眼レンズ | H5 | P7 | WF10 | P15 |
倍率 | 5 | 7 | 10 | 15 |
視野数 | 19 | 18.5 | 18 | 9.5 |
実視野 x4 | 4.75mm | 4.63mm | 4.5mm | 2.375mm |
x10 |
1.9mm | 1.85mm | 1.8mm | 0.95mm |
x40 |
0.475mm | 0.463mm | 0.45mm | 0.2375mm |
x60 |
0.317mm | 0.308mm | 0.300mm | 0.168mm |
x100 |
0.19mm | 0.185mm | 0.18mm | 0.095mm |
3)鏡筒
対物レンズと接眼レンズの間にある筒です。上には接眼レンズが付き、下には対物レンズを取り付けるレボルバーがついています。対物レンズを取り付けるレボルバーの下から接眼レンズが取り付く鏡筒間での距離を鏡筒長といい通常160mmに統一されています。従って、JIS規格の対物レンズや接眼レンズなら何処のメーカーのものでも使用できます。但し、学習用顕微鏡などは160mmでないものが多いようです。また、顕微鏡の焦点(ピント)合わせにはこの鏡筒を祖動ねじや微動ねじを回して移動する物とステージが上下するものとがあります。
4)レボルバー
対物レンズを取り付けるために鏡筒の下についていて、自由に回転できます。このレボルバーを回転させる事により、対物レンズを交換します。交換しても焦点位置のずれはわずかです。
5)アーム
鏡筒を支えるものですが、持ち運びする時にはここを持ち、脚台を下か支えて持ち運びします。
6)ステージ
プレパラートなどの試料を乗せる台で、精密駆動ステージではマイクロメーターという微妙に動かす事のできるねじがついて前後左右に雨後かう事のできるものも有ります。また、この写真の顕微鏡ではこのステージを上下する事によって焦点(ピント)を合わせます。
7)コンデンサ
反射鏡で反射された光を集めたり、絞りによって弱くしたり、上下に移動させて集光状態を変化させるためのレンズです。このコンデンサにも開口数がありますが、この開口数は使用する対物レンズよりも大きいものを使用します。ちなみに、私が使用している顕微鏡のコンデンサの開口数はN!=1.25です。通常低い倍率の時は
下げて、高い倍率のときは上げて使用します。ついていない顕微鏡もあります。
8)反射鏡
光源からの光を反射させて、試料に当てるための鏡です。通常、片方が平面鏡で、もう片方が凹面鏡になっています。強い光が必要な時は凹面鏡のほうを使いますが、最近の顕微鏡では光源を内蔵してあるものもあります。
9)祖動ねじ
プレパラート試料と対物レンズの合いだの距離を変化させて、焦点を荒く合わせるためのねじです。鏡筒部分が動くタイプのものと写真の顕微鏡のようにステージ部分が動くものとがあります。
10)微動ねじ
祖動ねじで合わせた焦点(ピント)を更に精密に調節するために使います。この微動ねじが付いていないタイプの顕微鏡もあります。
11)コンデンサねじ
コンデンサを上下させるためのねじで高倍率の時にはコンデンサを上に上げて、低倍率のときにコンデンサを下げます。
12)脚台
顕微鏡の足で顕微鏡全体を支えています。顕微鏡を持ち運ぶ時はアームを持って、脚台を下から支えましょう。