雑記帳

  • 温度計は本当に正しいのか? 校正用温度計を自作してみた

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    先日公開した「温湿度データロガーを使ってみた」の記事では、Bluetooth対応の温湿度データロガーJJWS23を紹介しました。ところが、しばらく使い続けているうちに、ある疑問が湧いてきました。

    「この温湿度計、本当に正しい値を示しているのだろうか?」

    実は私の手元には、JJWS23以外にもRX-350THやKT-255Uといった温湿度データロガーがあります。

    そこで複数の機器を同じ環境に並べて測定してみたところ、どれも似たような傾向を示すものの、微妙に値が異なっていることに気付きました。

    例えば、左上のグラフは2個のJJWS23とRX-350THやKT-255Uの測定値の違いを比べたものです。12日21時ころから、それぞれ異なる環境で温湿度を測定し、14日9時ころから一か所にまとめて同じ場所で測定した値をグラフにしたものです。
    このグラフから同じ場所に集めるとKT-255Uの湿度を除いて、温度も湿度もほぼ同じ値を示しますが、微妙に異なるのが気になります。

    ちょっと微妙な違いが気になったので右上の図のように拡大して確認してみると温度で0.3℃、湿度で2%(KT-255Uの湿度は20%)くらいの違いです。

    一般的な用途であれば十分に誤差の範囲と言えるでしょう。しかし、理系人間としては気になってしまいます。

    果たして、どの温度計が最も正しいのでしょうか?

    プロの現場では恒温槽などを用いて校正を行いますが、個人でも比較的簡単に実施できる方法があります。

    それが

    氷点校正(0℃)
    沸点校正(100℃付近)

    です。

    氷と水が共存している状態では温度は0℃になり、沸騰している水はおよそ100℃になります。

    この2点を基準にすれば、温度計の精度をかなり正確に確認できます。

    ただし問題があります。

    市販の温湿度データロガーは防水ではありません。

    そのまま氷水や熱湯に入れるわけにはいかないのです。

    そこで、まずは校正専用の温度計を自作することにしました。

    但し、熱電対のついた3,000円程度のデジタルマルチメーターをお持ちなら、自作するよりも、それを校正して使うほうが簡単かもしれません。


    校正用温度計を作る

    今回使用した温度センサーは LM35 です。

    LM35の最大の特徴は、

    「10mVで1℃を表す」

    という非常にシンプルな出力特性です。

    例えば、

    250mV → 25℃
    300mV → 30℃
    500mV → 50℃

    というように、出力電圧から温度を容易に換算できます。

    また、電源電圧は4V~30Vで動作し、25℃付近では±0.5℃程度の精度を持っています。

    電子工作初心者でも扱いやすく、価格も安価なため、自作計測器には最適なセンサーの一つです。

    ちなみに電圧の測定は10mV程度が測定できる安価なデジタルテスターやデジタルマルチメーターで可能です。

    用意したもの

    ・デジタルテスターあるいはデジタルマルチメーター

    ・アナログ 温度センサー:ここではLM35を使います。

    ・CR2016ボタン電池:4個

    ・CR2032電池ホルダー:2個

    ・100kΩ抵抗:1個

    ・ブレッドボード・ジャンパーワイヤセット

    なお、100kΩ抵抗は負温度領域でLM35を動作させるためのバイアス回路として使用しています。

    回路を組んでみる

    さて、LM35の基本的な回路は非常に簡単で、LM35へ電源を供給し、出力電圧をテスターで測定するだけで温度が分かります。

    TEXAS INSTRUMENTS社のホームページにデータシートに記載があります。

    ▶ 関連記事
    LM35 高精度摂氏直読温度センサ データシート (Rev. H 翻訳版)PDF|HTML

    そこから、引用した回路イメージ図を下に載せておきます。

    2℃から150℃までは負電源は不要で、0℃以下の-55℃まで測定するためには負電源が必要になります。負電源は4個の電池を直列につなぎ、その中心部分をアースとすることで実現します。これを実際の回路を概念図として書き直すと以下の様になります。

    今回は氷点校正も行う予定だったため、電池4個を直列接続し、その中点をGNDとすることで ±6V の電源を構成しました。

    これらをブレッドボードで組むと左下の写真のようになります。
    これをテスターに繋いだのが右下の写真です。表示が0.299V、299mVを示していますので、29.9℃ということになります。

    数個の部品を組み合わせるだけで温度計が完成するのは、電子工作の面白いところです。

    しかし、このままでは氷水や熱湯に入れることができません。


    LM35センサーを水没可能に加工する

    さて、冒頭に述べたように0℃の氷水と100℃の沸騰水で温度校正するためには上のような直付けのセンサーでは不可能ですので、このLM35センサーを水没用に加工します。

    用意するもの

    ・ストロー
    ・3芯ケーブル
    ・エポキシ接着剤
    ・IC丸ピンソケット

    3芯ケーブルの両端にLM35センサーと3ピン分だけ切り取ったIC丸ピンソケットにはんだ付けし、LM35センサーにストロー内部に収めた後、隙間を埋めるようにエポキシ接着剤で完全に封入しました。
    気泡が入らないように少しずつ流し込み、少しずつ固めながらLM35全体が覆われるようにエポキシボンドで固めます。

    出来上がりの写真が以下です。

    見た目は簡素ですが、校正用途としては十分な強度と防水性が得られます。


    氷点校正と沸点校正を行う

    準備ができたので校正を行います。

    まず氷点校正です。
    ここで注意したいのは、単なる冷水では0℃にならないことです。

    氷点校正では、氷と少量の水が共存し、十分にかき混ぜられた状態の氷水を使用します。
    この状態では理論上0℃になります。

    下の写真は、0℃氷水の校正の様子です。

    続いて沸点校正を行います。

    沸騰している水へ温度プローブを投入し、温度を測定しました。

    以下にデータロガーで記録した結果をグラフで示します。

    その結果、

    氷点:-0.18℃
    沸点:99.4℃

    となりました。

    0℃側は非常に良好です。

    しかし100℃側では若干低めに出ています。

    このまま校正式を作ると

    Temperature(℃)=C1×Voltage(V)+C2Temperature(℃)=C_1\times Voltage(V)+C_2
      C1=100.4217714   C2=0.180759189C_1=100.4217714   C_2=0.180759189

    となります。

    ザクっと室温あたりを計算すると

    0mV→0.18℃、300mV→30.3℃、500mV→50.4℃

    通常範囲では0.2~0.4℃くらい高く出ます。センサー精度が25℃付近では±0.5℃程度なので誤差範囲といえば誤差範囲ですが、気になります。

    特に100℃側では誤差が大きめです。

    実は沸騰している水は100℃ではなかった

    ところで、「沸騰水=100℃」と考えて良いのでしょうか。

    実はそう単純ではありません。

    水の沸点は気圧によって変化します。

    標高の高い山でお湯が低い温度で沸騰することはよく知られています。

    気圧と沸点の関係はアントワンの方程式であらわされます。

    アントワンの方程式
    log⁡P=A−BC+T\displaystyle \log P= A-\frac{B}{C+T}
    PPは飽和蒸気圧、TTは温度、A,B,CA,B,Cは物質固有のアントワン係数


    hPahPaをmmHgmmHgに換算するには0.7500617 0.7500617を掛ければよいので、P(mmHg)=0.7500617・P(hPa)P(mmHg)=0.7500617・P(hPa)

    従って、

    アントワンの方程式
    log⁡(0.7500617・P)=A−BC+T\displaystyle \log (0.7500617・P)= A-\frac{B}{C+T}

    飽和蒸気圧:P(hPa)P(hPa)、温度:T(℃)T(℃)、
    水のアントワン係数
    A=8.02754A=8.02754、B=1705.616B=1705.616、C=231.405C=231.405

    沸騰した際にはその時の気圧が飽和蒸気圧に等しくなるので、その際の沸点は上の式を逆算して温度を求めればよいことになります。


    T=BA−log⁡(0.7500617・P)−CT=\frac{B}{A-\displaystyle \log (0.7500617・P)}-C

    蒸気圧:P(hPa)P(hPa)、温度:T(℃)T(℃)、
    水のアントワン係数
    A=8.02754A=8.02754、B=1705.616B=1705.616、C=231.405C=231.405

    となります。

    この日(2026年8月23日)の水戸の気圧は、気象庁の気圧データで確認すると1006.9hPa1006.9hPaでした。

    この条件でアントワンの方程式から沸点を求めると99.82℃99.82℃となります。

    つまり、

    理論沸点:99.82℃
    測定値:99.4℃

    であり、誤差は約-0.42℃となります。

    当初考えていた「-0.6℃」よりもかなり小さな誤差です。

    また、水中の溶存成分や不純物によっても沸点はわずかに変化しますが、一般的な水道水ではその影響は非常に小さいと考えられます。

    これを考慮して新たに校正式を作ると

    Temperature(℃)=C1×Voltage(V)+C2Temperature(℃)=C_1\times Voltage(V)+C_2
      C1=100.2385189   C2=0.180429334C_1=100.2385189   C_2=0.180429334

    新しい校正曲線だと

    0mV→0.18℃、300mV→30.25℃、500mV→50.3℃

    補正量は大きくありませんが、より信頼性の高い測定が可能になります。

    LM35の測定電圧とそれを校正した温度(気圧補正無と気圧補正有)のグラフを掲載します。


    温度を正しく測るということ

    今回の目的は単に温度計を作ることではありません。

    本当の目的は、

    「温度計の表示をどこまで信頼できるのか」

    を確かめることでした。

    実験を通して分かったのは、

    温度計には個体差がある
    校正によって精度を確認できる
    水の沸点は気圧で変わる
    温度測定には物理学や計測工学が深く関わっている

    ということです。

    普段は何気なく見ている「室温25℃」という数字も、その裏ではセンサーの特性や校正作業によって支えられています。

    数百円の温度センサーと少しの電子工作で、そんな計測の世界を体験できるのはなかなか面白いものです。

    次回は、この校正済み温度計を使って JJWS23、RX-350TH、KT-255U が実際にどの程度正確なのかを比較検証してみたいと思います。

  • X(Twitter)タイムラインがWordPressに埋め込めない問題をChatGPTと徹底調査した結果

    カテゴリー:

    はじめに

    このホームページにX(旧Twitter)のタイムラインを埋め込もうとしたところ、公式の埋め込みコードを使用してもタイムラインが表示されず、

    「Posts by ○○」というリンクだけが表示される

    という現象が発生しました。

    最初はWordPressの設定ミスを疑いましたが、原因が分からなかったため、ChatGPT(GPT-5.5)に調査を依頼し、一緒に原因を一つずつ切り分けていくことにしました。

    数時間にわたり、WordPress・Apache・HTML・JavaScript・ネットワーク・XのAPIまで順番に確認した結果、原因はX(旧Twitter)側の埋め込みサービスにある可能性が極めて高いという結論に至りました。

    同じ症状で困っている方の参考になればと思い、調査内容をまとめます。


    環境

    • WordPress 7.0.1
    • テーマ:Twenty Twenty-Five
    • サーバー:Ubuntu 24.04
    • Apache 2.4.64
    • PHP 8系
    • HTTPS(Let’s Encrypt)

    使用した埋め込みコード

    X公式(publish.x.com)が生成したコードをそのまま使用しました。

    <a class="twitter-timeline"
    href="https://x.com/kagaku_info?ref_src=twsrc%5Etfw">
    Posts by kagaku_info
    </a>
    
    <script async src="https://platform.x.com/widgets.js"
    charset="utf-8"></script>
    

    症状

    表示されるのは

    Posts by kagaku_info
    

    というリンクだけです。

    クリックするとXのプロフィールは正常に表示されますが、タイムラインは埋め込まれません。


    ChatGPTと一緒に原因を切り分ける

    ChatGPTからは

    「WordPressではなく、まず最小構成で試しましょう。」

    という提案がありました。

    そこで、WordPressを疑う前に、原因を一つずつ消していくことにしました。


    ① WordPressを疑う

    通常の段落ブロックではなく、

    カスタムHTMLブロック

    で公式コードを貼り付けました。

    結果

    改善せず。


    ② widgets.jsを確認

    Chrome DevTools の Network を確認すると

    https://platform.x.com/widgets.js
    

    は

    200 OK
    

    でした。

    つまりJavaScript自体は正常に読み込まれています。


    ③ JavaScriptエラーを確認

    Consoleには

    JQMIGRATE: Migrate is installed
    

    しか表示されません。

    JavaScriptエラーはありませんでした。


    ④ WordPressを完全に除外

    ChatGPTから

    「WordPressを使わないHTMLだけでも試しましょう。」

    と提案されたため、

    <!DOCTYPE html>
    <html lang="ja">
    <head>
    <meta charset="utf-8">
    <title>X Test</title>
    </head>
    <body>
    
    <a class="twitter-timeline"
    href="https://x.com/OpenAI">
    Posts by OpenAI
    </a>
    
    <script async src="https://platform.x.com/widgets.js"></script>
    
    </body>
    </html>
    

    という test.html を作成しました。

    結果は

    WordPressを使わなくても同じ症状でした。

    ここで

    WordPressは原因ではない

    ことが分かりました。


    ⑤ Apacheを疑う

    続いてChatGPTから

    「HTTPレスポンスヘッダーを確認しましょう。」

    という提案がありました。

    確認したところ

    • Content-Security-Policy
    • X-Frame-Options
    • Cross-Origin-Embedder-Policy

    などは一切設定されていません。

    Apache設定も確認しましたが、

    iframeをブロックする設定はありませんでした。

    ここで

    Apacheも原因ではない

    ことが分かりました。


    ⑥ ネットワークを変更

    さらに

    • スマホ4G/5G
    • スマホテザリング
    • VPNあり
    • VPNなし

    で確認しました。

    結果は

    すべて同じ。


    ⑦ OpenAI公式アカウントでも試す

    ChatGPTから

    「OpenAIなど別アカウントでも試してください。」

    という提案がありました。

    結果は

    OpenAIでも同じ症状。

    つまり

    アカウント固有の問題ではありませんでした。


    決定的な証拠

    ChatGPTから

    「Networkで syndication.twitter.com を確認してください。」

    と指示されました。

    すると

    https://syndication.twitter.com/srv/timeline-profile/...
    

    が

    429 Too Many Requests
    

    を返していました。

    つまり

    widgets.js
          ↓
    syndication.twitter.com
          ↓
    429
          ↓
    iframe生成失敗
    

    という流れになっていたのです。

    これが

    タイムラインが表示されない直接の原因

    でした。


    X Developer Communityでも確認

    ChatGPTに最新情報を調査してもらったところ、

    X Developer Communityには

    • widgets.jsは正常
    • timelineだけ表示されない
    • syndication.twitter.com が429
    • コードは変更していない

    という報告が複数ありました。

    つまり

    今回だけの現象ではありません。


    結論

    今回の調査では

    • WordPress
    • HTML
    • Apache
    • HTTPS
    • JavaScript
    • ネットワーク
    • スマートフォン
    • VPN

    まで一つずつ切り分けました。

    その結果、

    https://syndication.twitter.com/srv/timeline-profile/
    

    が

    429 Too Many Requests
    

    を返していることを確認しました。

    現時点では、

    WordPressやApacheではなく、X(旧Twitter)側の埋め込みサービスに原因がある可能性が極めて高い

    と判断しています。


    ChatGPTを使って感じたこと

    今回の調査では、ChatGPTは「答えを決めつける」のではなく、

    • 仮説を立てる
    • 一つずつ検証する
    • 結果に応じて仮説を修正する

    という形で、まるで一緒にデバッグを行うパートナーのように調査を進めることができました。

    途中で「WordPressではない」「Apacheでもない」といった結論も、実際の検証結果に基づいて修正しながら進められたため、最終的にはX側の埋め込みサービスが429を返しているという技術的な根拠までたどり着くことができました。

    AIは万能ではありませんが、人間が検証を行い、AIが次の切り分け手順を提案するという進め方は、トラブルシューティングにおいて非常に有効だと実感しました。


    とりあえず

    X(旧Twitter)とInstagram(インスタグラム)へのリンクはフッダーに付加してあります。

    また、埋め込みの試験をTESTで行っています。

    もし、Xのタイムラインの埋め込みがうまくいっている人がいらっしゃったらコメント欄からでも教えてください。

  • 温湿度データロガーを使ってみたら、エアコンの制御まで見えてきた

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    今年の夏も、昨年に負けないくらい暑い日が続いています。

    暑い日には「今日は暑いなぁ」、寒い日には「なんだか冷えるなぁ」と感じますが、そのとき実際の室温や湿度がどれくらいなのかを意識することは意外と少ないものです。

    皆さんは普段、部屋の温度や湿度をどのように管理しているでしょうか?

    時計に付いている温度計をちらっと見る程度という方もいれば、エアコン任せという方もいるかもしれません。

    実際、「暑い」「寒い」という感覚には個人差があります。

    職場でも、

    「今日は暑いね」

    と言う人がいる一方で、

    「えっ、27℃もあるの?もっと低いと思った」

    という人もいます。

    同じ空間にいても、人によって感じ方は大きく異なるのです。

    環境省では、省エネルギーを意識しながら快適性を保つ目安として、

    夏季:室温28℃
    冬季:室温20℃

    を推奨しています。

    しかし本当に部屋の温度はそのように推移しているのでしょうか。

    以前から、

    室内の温度変化
    車内温度の変化
    エアコンによる温湿度制御

    に興味があった私は、実際に測定してみることにしました。


    2千円で買える温湿度データロガー

    そこで購入したのが温湿度データロガーです。

    昔はデータロガーといえば研究用途や産業用途が中心で、数万円から数十万円する機器でした。

    ところが現在では、2千円で購入できる製品も珍しくありません。

    Amazonで探した結果、今回購入したのは JJWS23というモデルです。

    液晶表示はありませんが、

    ・温度・湿度を同時測定
    ・最短1分間隔で記録
    ・BlueToothによるデータ回収
    ・CSV出力対応
    ・低価格

    という条件を満たしていました。

    特にBluetooth対応なのが魅力です。

    測定場所へ行って本体を回収しなくても、その場でスマートフォンからデータを取得できます。


    まずは3日間、どこへ行くにもJJWS23を持ち歩いてみた

    せっかく購入したので、まずは徹底的に使ってみることにしました。

    購入後の3日間、 JJWS23を常に携帯し、自分が滞在する環境の温度と湿度を記録してみました。

    言ってみれば、自分自身が実験台です。

    この期間は平日だったので

    ・06:00~18:00頃:職場
    ・18:00~06:00頃:自宅

    という生活パターンになります。

    その結果をグラフ化してみると、温度と湿度が時間帯によって実に面白い変化を見せてくれました。

    8/3から8/7の筆者I-sattoの滞在した環境の温湿度のトレンド

    赤が湿度(humidity)、黒が気温(Temperature)です。

    また、グラフはグレーでハッチングしてあるところが職場での測定値になります。ちなみに、この三日間は比較的涼しく、以下のような気温でした。

    平均気温(℃)最高気温(℃)最低気温(℃)平均湿度(%)
    8月4日23.827.820.076
    8月5日24.428.919.375
    8月6日26.230.822.389

    データからエアコンの制御が見えてくる

    最も興味深かったのは職場での測定結果です。

    朝、出勤してエアコンを入れると室温が下がり始めます。

    しかし、設定温度付近に達すると冷房能力が弱まり、再び温度が上昇します。

    すると今度は冷房が強くなり、また温度が下がる。

    この繰り返しがグラフ上にはっきり現れていました。

    以下のグラフは8月5日の6時から18時の職場にいる時間帯を拡大表示したものです。

    2026年8月5日の筆者I-sattoの滞在した職場の温湿度の時間変化

    波打つような温度変化を確認すると、

    エアコンが約20分周期で室温を制御している

    ことが見えてきます。

    普段は意識することのない空調制御の動きが、温湿度データとして可視化された瞬間でした。

    さらに室温はおおむね27℃前後で維持されていることも確認できます。


    西日がエアコンに勝つ瞬間

    さらに興味深いのが午後の変化です。

    昼過ぎまでは安定していた室温が、14時半頃から急激に上昇します。

    職場は西日の影響を受けやすい部屋です。

    そのため午後になると窓から侵入する熱量が増加し、エアコン能力だけでは室温上昇を抑えきれなくなります。

    結果として、

    26℃
    27℃
    28℃
    一時的に29℃

    まで上昇する様子がグラフに記録されていました。

    まさに、

    「西日との戦い」

    がデータから読み取れたわけです。


    誰もいない職場は夜どうなるのか?

    さらに実験を続けました。

    8月5日はJJWS23を持ち帰らず、職場に置いたまま帰宅してみました。

    つまり、8月5日18時から翌日8月6日の6時までは

    無人・空調なしのオフィス

    の温湿度変化を測定したのです。

    結果は予想以上に興味深いものでした。

    夕方に29℃近くあった室温は、夜を通してゆっくりと低下していきます。

    一方、湿度は徐々に上昇します。

    そして日の出前後まで温度は下がり続け、朝になると再び上昇へ転じます。

    人がいない空間でも、建物全体が外気や日射の影響を受けながら呼吸するように温度を変化させていることがよく分かりました。


    実は意外と高機能だった専用アプリ

    このJJWS23にはスマートフォン用アプリが用意されています。

    単なる温湿度表示だけでなく、

    ・カビのリスク

    ・測定ログの最高温度/最低温度とその日時

    ・現在温度、現在湿度

    ・VPD(飽差)

     VPD(Vapor Pressure Deficit)は、空気がどれだけ水蒸気を保持できるかを示す指標で、植物の蒸散や水分管理に大きな影響を与え、「飽差」と呼ばれます。
    この値(VPDVPD)は飽和蒸気圧(VPesVPes)と相対湿度(RH)から、以下のテテンス(Tetens)の式で計算が可能です。

    VPD=VPes(T)(1−RH/100)VPD=VPes(T) (1-RH/100)
    VPes(T)=0.61078exp(17.27T)/(T+237.3))VPes(T)= 0.61078 exp( 17.27 T )/ (T + 237.3) )

    ここで、飽和蒸気圧(VPesVPes)は温度(TT)から求めることができるので、実質的にはVPDVPD(飽差)は温度(TT)と相対湿度(RHRH)が判れば計算できるので、ここで示されている値は計算値になるはずです。
     で、実際に計算すると
    28.5℃、52.4%時のVPDは1.85kPaとなり表示値と一致します。
    29.5℃、72.3%時には1.14kPaとなり、こちらも表示値と一致します。

    ・露点

    露点は結露する温度で、室内やビニールハウスなど閉じた環境で、そのまま温度を下げると、この露点まで下がったときに結露してしまいます。この露点(Td)も温度(T)と相対湿度(RH)から以下の式で計算が可能です。

    Td=237.3×γ/(17.27−γ)Td = 237.3 × γ / (17.27 − γ)
    γ(RH,T)=ln(RH/100)+17.27T/(T+237.3)γ(RH,T) = ln(RH/100) + 17.27 T / (T + 237.3)

    で、実際に計算すると
    28.5℃、52.4%時の露点は17.80℃となり表示値とほぼ一致します。
    29.5℃、72.3%時には23.98℃となり、こちらは表示値と一致します。

    ・暑さ指数

    なども表示できます。

    農業用途を意識しているためか、植物栽培で重要となるVPDまで表示されるのは少し驚きでした。


    「暑さ指数」の正体を調べてみた

    ところが、アプリの表示を見ていて気になる点を発見しました。

    表示される「暑さ指数」が、どう計算してもWBGT(湿球黒球温度):Wet Bulb Globe Temperatureと一致しないのです。

    そこで計算式を調べてみましたが、どうしても値が合いません。

    通常、黒球温度が判らないと推定が難しいのですが、室内用として簡易推定式(気温(T)と湿度(RH)のみで近似)が決められています。

    簡易推定式(気温と湿度のみで近似)

    WBGT=0.7×Tw+0.3×TWBGT = 0.7 ×Tw+ 0.3 ×T
    Tw(RH,T)=Tatan(0.151977(RH+8.313659)0.5)+atan(T+RH)Tw(RH,T)= T atan(0.151977 (RH+8.313659)^{0.5})+atan(T+RH)  
     −atan(RH−1.676331)+0.00391838・RH1.5atan(0.023101・RH) -atan(RH-1.676331)+0.00391838・RH^{1.5} atan(0.023101・RH)   −4.686035   – 4.686035 

    なお、上の湿球温度Tw(RH,T)はStull近似式といわれる計算式を用いて温度(T)と湿度(RH)から算出しています。

    で、実際に計算すると
    28.5℃、52.4%時のWBGTは26.37℃となり表示の「暑さ指数」値29.29℃と一致しません。また、 29.5℃、72.3%時には28.30℃となり、こちらも表示値34.35℃と全く一致しません。

    いったいどういうことでしょう?

    もしかして翻訳の問題ではないか?

    そう考えて英語表記を確認すると、表示されていたのは

    Heat Index

    でした。

    つまり日本語版では「暑さ指数」と表示されていますが、実際にはWBGTではなく「熱指数」を示していたのです。

    ということで、「熱指数」で計算してみます。熱指数(Heat Index:HI)は気温(T)と湿度(RH)のみで以下の式で熱指数を定義しているステッドマン表を近似できます。

    HI=c1+c2・T+c3・RH+c4・T・RH+c5・T2+c6・RH2HI=c1 + c2・T + c3・RH + c4・T・RH + c5・T^{2} + c6・RH^{2}
            +c7・T2・RH+c8・T・RH2+C9・T2・RH2         + c7・T^{2}・ RH + c8・T ・RH^{2} + C9・ T^{2} ・RH^{2}
      c1=−8.784694756 c2=1.61139411 c3=2.338548839  c1 = -8.784694756 c2 = 1.61139411  c3 = 2.338548839
      c4=−0.14611605 c5=−0.012308094 c6=−0.016424828  c4 = -0.14611605  c5 = -0.012308094 c6 = -0.016424828
      c7=0.002211732 c8=0.00072546 c9=−0.000003582   c7 = 0.002211732 c8 = 0.00072546 c9 = -0.000003582  

    で、実際に計算すると
    28.5℃、52.4%時のHeat Indexは29.29℃となり表示値と一致します。
    29.5℃、72.3%時には34.35℃となり、こちらも表示値と一致します。

    ということで、このアプリでいう暑さ指数とはHeat Indexすなわち、熱指数を表していることが判りました。いわゆる熱中症の判断材料とするWBGTとは異なりますので、注意してください。


    使ってみて分かったデータロガーの面白さ

    今回、温湿度データロガーを使ってみて感じたのは、

    「測るだけで世界の見え方が変わる」

    ということです。

    何となく暑いと思っていた環境も、

    エアコンがどのように制御しているのか
    建物がどのように熱を蓄えているのか
    湿度がどのように変動しているのか

    をデータとして確認できます。

    さらに、普段は意識しないVPDや露点、Heat Indexといった指標の意味を理解するきっかけにもなりました。

    2千円で購入できる小さな機器ですが、その中には思いのほか多くの「科学のつまみ食い」が詰まっています。

    温度や湿度の変化に興味がある方なら、一度試してみる価値は十分にあるのではないでしょうか。