【科学のつまみ食い】   天体望遠鏡の仕組み 天体望遠鏡の使い方 天体望遠鏡 対象天体(何を観測するか?)
  接眼レンズ 周辺機器1 周辺機器2 自作機器
  天体写真の基礎 デジカメ写真 デジタルビデオ 銀鉛写真
         
天体望遠鏡観測の方法

 

by I-satto@03/07/15

天体望遠鏡の仕組み

【はじめに】

 皆さん,天体望遠鏡を使ったことがありますか? 天体望遠鏡は遠くにあるものを拡大してみるための器械で望遠鏡や双眼鏡と同様のものです。 通常の望遠鏡や双眼鏡は正立像といって、上下左右が目で場合と同様に見えますが、天体望遠鏡は倒立像といって、通常は上下左右が反対に見えます.. 通常の望遠鏡や双眼鏡は20倍くらいまでが普通ですが、 天体望遠鏡は20倍くらいから300倍くらいまで拡大してみる事ができます。夜空を眺めて、星を観測するのはたのしいものです..ぜひ観測してみてください。このページは 天体望遠鏡の仕組みや使い方、天体望遠鏡写真の撮り方等を紹介します。簡単ですので、皆さんもぜひやってみてくださいね。


【天体望遠鏡の鏡筒(光学系)の種類】
 

 天体望遠鏡には大きく分けて、対物鏡に凸レンズ(対物レンズ)を使用して遠くにあるものの像を近くに作り、その像を接眼レンズで拡大して目で見るタイプの屈折式望遠鏡と、対物鏡に凹面鏡(主鏡)を使って、遠くにあるものの像を近くに作り、その像を接眼レンズで拡大して目で見るタイプの反射式望遠鏡とに分けられます。 それぞれ、屈折望遠鏡にはガリレオ式ケプラー式等が 、あり、対物レンズは1枚のレンズのみを使用した単レンズ式、色消しをしたアクロマート、アポクロマートなどがあります。、反射望遠鏡にはニュートン式カセグレン式 、クーで式等があります..その他に、レンズと反射鏡を組み合わせた屈折反射式等と呼ばれるシュミットカセグレン式、マクストフカセグレン式、 シュミットニュートン式、ベーカーシュミット式等があります。下に、屈折望遠鏡と反射望遠鏡の特徴を表にします。

  項目 屈折式(ケプラー式) 反射式(ニュートン式)
構造 光学系    
特徴 Fナンバー(焦点距離/口径) 大きい 小さい
  収差 色収差 コマ収差
  視界 広い 狭い
  コントラスト 良い 悪い
  明るさ 暗い 明るい
観測対象 太陽 ○(口径を絞る必要あり)
 
  惑星
  変光星 ◎(単色測光向き) ○(多色測光向き、視野が狭い)
  重星
  星雲
  星団

 


【どうして大きく見えるの?】

 天体望遠鏡ってどういうものでしょう?  私はニュートン式の反射望遠鏡とシュミットカセグレン式の望遠鏡を使用していますが、ここでは、代表的な天体望遠鏡として屈折式のケプラー望遠鏡と反射式のニュートン望遠鏡について説明します。  

 天体望遠鏡の仕組みです。 天体望遠鏡は簡単に言うと2つのレンズの組み合わせで、小さなものを大きく拡大して観察する装置です。試料に近いほうのレンズを対物レンズ、目で覗く方のレンズを接眼レンズと言います。 上の図は、ちょうど対物レンズにあたります。では、接眼レンズはどういう仕組みでしょう?これは、顕微鏡観察の方法で説明していますので詳しくはそちらをご覧ください。天体望遠鏡 は対物レンズで近くに結像した実像を接眼レンズで更に拡大する仕組みになっています。接眼レンズは、虫めがねの役割を果たしています。天体望遠鏡の倍率M対物レンズの 焦点距離Fo接眼レンズの焦点距離Feで割った値になります。即ち、

M=Fo / Fe

です。

・ケプラー式望遠鏡
 実際にケプラー式の望遠鏡は下の図のように上で述べたとおりになます。

 

・ニュートン式望遠鏡

 ニュートン式反射望遠鏡の場合は、対物レンズを凹面鏡に置き換えたものであり、下の図のような仕組みになっています。

 


 

【天体望遠鏡の性能】

 

 天体望遠鏡 の性能とはなんでしょう?倍率?違います。天体望遠鏡の性能は分解能が高いことです。これは、主鏡の直径に比例します。主鏡が大きければ大きいほど、その分解能は高くなります。そのほかに、集光力、倍率などがあります。これらは、以下のようにあらわされます。

 主鏡の有効径:D (mm)

 主鏡の焦点距離:fo (mm)

 接眼レンズの焦点距離:fe (mm)

 接眼レンズの見かけ視野:β (°)

 

ところで、天文の世界では天体同士の距離を見かけの距離として、以下の図に示すように、その角度で表します。

ですから、これから説明する天体間の距離に関する値、分解能や視野の広さは、全て角度で表されます。天体の位置も角度で表されますね。

 

1)分解能(”)


 2つの物体を見分けることができる最小の角距離を分解能といいます。

 分解能は「ドーズの限界」と言う経験則を使うが普通です。これは、

 

   115.8″/D  

 

で計算されます。通常天体望遠鏡のカタログなどに載っている望遠鏡の分解能はこの値です。
一方、,光学理論に基づいて、人間の目が最も感度の高い500nmの波長の光の回折による像の乱れを計算した解説理論値による分解能は

 

   125.8″/D

 

で計算されます。

 

2)集光力(倍)
 望遠鏡が肉眼の何倍の光を集めることができるかという値で、主鏡の面積と肉眼の瞳の面積の比であらわされます。通常、暗所での瞳の直径は7mm程度といわれています。従って、望遠鏡の集光力は以下の式で表されます。

 

   D2/72

 

3)極限等級(等級)

 観測できる最大の等級 で、集光力の分だけ,暗い星が見えます。実施には、極限等級は空の明るさやシーイングなどの影響を大きく受けますが、暗い空においては以下のように計算されます。

 

   1.77+5Log D

 

4)倍率(倍)

 肉眼で見た天体の見かけの大きさと,望遠鏡を通してみた見かけの大きさの比 率です。主鏡による実像の大きさは対物鏡の焦点距離に比例し,接眼鏡による拡大率は接眼鏡の焦点距離に反比例します。従って、倍率は

 

   fo/fe

 

であらわされます。

 ところで、天体望遠鏡で有効な最高倍率とはどのくらいでしょう?

これは、望遠鏡の分解能を目の分解能まで、引き上げるのに必要な倍率ということになります。一般に目の分解能は人や状態、対象物によって異なりますが、60”といわれています。従って、望遠鏡の分解能を凡そ

 

   120″/D  

 

とすれば、

 

   D/2  

 

となります。しかし、実際、眼の分解能ぎりぎりでは、よい観察はできませんから、その数倍が必要となります。従って、通常、主鏡の有効径の2倍

 

   2D

 

を最高有効倍率とすることが多いようです。

 

5)実視界(°)

 望遠鏡では、惑星や二重星などを観測する場合などは、倍率や分解能も重要ですが、星雲や星団などを観測する場合は視野の広さも重要になります。天体望遠鏡で見ることのできる葉に(実視野)は

 

   2 tan-1(tan β ・fe/fo)

 

で表されます。

 

6)Fナンバー

 口径比の逆数で、望遠鏡の明るさを示します。Fナンバーが小さいほど明るく、以下の式で表されます。

 

   fo/D

 

 


【接眼レンズ】

 

 さて、望遠鏡は主鏡と呼ばれる対物レンズ(鏡)と接眼レンズ(アイピース)があって初めて遠くのものが見えるようになります。接眼レンズにもいくつか種類があります。2枚のレンズで構成された簡単なラムスデン(R)ハイゲン(H)、色消しがよく見かけ視野の広いケルナー(K)、収差がほとんどゼロで色消しもよいオルソスコピック(Or)、見かけ視野が非常に広いエルフレ(E)等があります。最近は、メーカー独自のアイピースが多いですが、一般的にプローゼル(PL)と呼ばれるものは基本設計がオルソスコピックです。また、接眼レンズの径によって、25.4mm(1インチ)、31.7mm(1.25インチ)、36.4mm(1.4インチ)、50.8mm(2インチ)等があり、現在はアメリカンサイズといわれる31.7mmが主流ですが、以前は24.5mmが主流でした。

 


【天体望遠鏡の架台の種類】

 

  天体望遠鏡は光学系とともに、その架台も重要です。架台には大きく分けて二つの形式があります。一つは鏡筒を上下と水平方向に回転させる経緯台、もう一つは地球の自転軸とそれに垂直な方向に回転させる赤道儀とがあります。鏡筒(望遠鏡)を載せる架台は非常に重要です。

 

  経緯台 赤道儀
作動 高度(上下)・方位(左右)
高度目盛環・方位目盛環がついています。
赤経軸(極軸)・赤緯軸
赤経環・赤緯環がついています。
据付 設置するのみ 極軸を地軸(自転軸)に合わせる調整が必要
使い方 天体の日周運動を追うためには上下・左右両軸を作動させる必要がある。 赤経軸を回転させるのみで天体の日周運動を追うことが可能。
観測

長時間観測に不向き

長時間観測に適する
写真撮影 短時間撮影向き(太陽、月、惑星) 長時間撮影向き
(太陽、月、惑星以外に、星雲星団)
取り扱い 簡単 難しい
 

シュミットカセグレン式望遠鏡+経緯台

ニュートン式反射望遠鏡+赤道儀

 

 


【その他】

 

天体望遠鏡で観測するためには、上に上げた主鏡や接眼レンズ(アイピース)、赤道儀や経緯台などの架台のほかに、以下のようなものがあります。

 

1)ファインダー

 天体望遠鏡は最低でも20〜30倍と倍率が高いため、天体を望遠鏡で見えるように視野内に導くのには不便です。そのため。通常は低倍率で視野の広いファインダーという小型の望遠鏡がついています。通常5倍程度で、 口径も大きくて50mm程度です。 昼間の明るいうちに遠方の物を覗いて望遠鏡の中心とファインダーの中心が一致するように調整しておきます。そうすることにより、ファインダーで覗いたものが望遠鏡で見ることができるようになります。

 

2)天頂プリズム(ミラー)

 ニュートン式反射望遠鏡は鏡筒(筒)の横から覗き込むので、楽な姿勢で天体観測をすることができますが、屈折式望遠鏡やシュミットカセグレン式は望遠鏡の後方から覗き込むことになります。このとき、水平近くの天体を見るのには不便はないですが、天頂付近の天体を除くのには望遠鏡を下から覗きこまなけれ場なりません。これは、かなり無理な姿勢です。そのため、90度向きを変えられる天頂プリズムや天頂ミラーを使用します。但し、【はじめに】で述べたように望遠鏡は上下左右が逆(180度回転)に見えますが、天頂ミラーを使用すると更に 上下が逆に見えます。結局、左右が反転してみることになり、これは、鏡像といいます。

 

3)レデューサー

 望遠鏡の倍率が高すぎて、接眼レンズだけでは低倍率が得られないときに、望遠鏡全体の焦点距離を近かくするために使用します。

 

4)バローレンズ

 望遠鏡の倍率が低すぎて、接眼レンズだけでは高倍率が得られないときに、望遠鏡全体の焦点距離を長くするために使用します。

 

5)デジカメアダプター

 デジタルカメラやデジタルビデオカメラ、一般のコンパクトカメラなど、一般にレンズ交換が不可能なカメラを使用して天体望遠鏡で写真を撮影するために使用するアダプターです

 

6)一眼レフアダプター

 デジタル一眼レフカメラや一眼レフカメラなど、一般にレンズ交換が可能なカメラを使用して天体望遠鏡で写真を撮影するために使用するアダプターです。

 

7)その他

 フィルター、ガイドアイピース、フリップミラー等、結構、小物が必要になる場合は多いものです。

 

 

科学のつまみ食い