では水蒸気は、何度まであがるのですか?
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by I-satto@03/02/07
2000年2月4日に小学校4年生の女の子からどうして水は100℃以上にならないの?に引き続きご質問を頂きました.。
では、水蒸気は何度まで上がるのですか?
どうして水は100℃以上にならないの?で書いたように水は100度で水蒸気になってしまいますね。では、水蒸気は何度まで上がるのでしょう?
水蒸気はいくらでも温度を上げることができるのです。水蒸気のような気体の温度は、その気体の圧力に体積を掛けた値に比例します。これをボイル-シャルルの法則と言いますが、詳しくは一番最後に説明しますね。ところで、圧力ってわかりますか?圧力は押したり引いたりする力で、水蒸気のような気体の場合には広がろうとしたり、縮まろうとしたりする力です。風船には圧力が働いています。風船を山の上に持っていくと山の上は地上よりも圧力(気圧)が低い(空気が薄いのは圧力が低いため)ので風船は大きくなります。この大きくなろうとする力が圧力です。体積はわかりますか?体積は物の大きさです。
このボイル-シャルルの法則によれば、水蒸気の温度を上げると、圧力や体積が増加します。
水(液体)や氷(固体)の場合には、体積や圧力はほぼ一定で、その結びつきを壊すために熱(エネルギー)が使われました。ですから、氷は0度で水に変わり、水は100度で水蒸気に変わりました。ところが、水蒸気にエネルギーを与えると体積や圧力が増えるためにいくらでも温度が上がってしまうのです。
どうして水は100℃以上にならないの?での地震の例でいうと、地震でゆすられて、皆がばらばらに広がっていく(体積が大きくなる)と考えてください。広ささえあればいくらでも広がって、互いにぶつかることはなくなります。
ここから先はもっと大きくなったら習うと思いますので、簡単に覚えておくだけで良いと思います。
水蒸気の温度を上げるときに、体積を一定にしておくと2つの水蒸気(2H2O)が熱分解して2つの水素(2H2)と1つの
酸素(O2)に変わります。条件によって温度が異なります。
こちらも地震の例でいうと、部屋の中(体積が一定)にいるときに地震があったとします。すると、体を壁にぶつけたり、友達とぶつかったりしますね。すると怪我をします。そうです。人自身が傷ついて壊れます。水蒸気も閉じ込めて(体積を一定にして)熱を加えると壊れて、水素と酸素になってしまします。
更に温度を上げていくと、水素や酸素も更に分解して、電子と原子核になります。これをプラズマ状態といいます。
こちらも地震で言うと同じで、更に壊れてしまうのです。
このように、条件によって異なりますが、もし体積を一定にしておくと、物はどんどん壊れてしまい、気体からプラズマへと変化していきます。
まとめると、固体から液体へ、液体から気体へ、気体からプラズマへと状態が変化していくのです。
ボイル-シャルルの法則
ここで簡単にボイル-シャルルの法則を説明しておきます。この法則はイギリスの物理学者ボイルが発見したボイルの法則(温度が一定のとき、気体の体積は圧力に反比例する)とフランスの物理学者シャルルが発見したシャルルの法則(圧力が一定のとき、気体の体積はその絶対温度に比例するという法則)の2つの法則をまとめた法則で、ボイル-シャルルの法則は気体の体積は圧力に反比例し、絶対温度に比例するという法則です。このボイル-シャルルの法則をきちんと式にまとめたものが、理想気体の状態方程式と呼ばれる下の式です。
以下は、小学生には難しいです、高校生にならないと判らないと思いますが、参考までに書いておきます。
理想気体の状態方程式
気体の絶対温度 T、気体の圧力 P、気体の体積 V、分子数N、とし、
気体定数 R0=8.314472J/mol K
アボガドロ定数 N0=6.02214199x1023個/mol
としたときに
PV=N/N0 R0T
で、あらわされます。
さて、この式を使って、ちょっと計算してみましょう。
上の式の形をちょっと変えると
PV/T=N/N0 R0=一定
となり、一定であることがわかりますね。ところで、今、地上では圧力Pは一定ですから、更に
V/T=N/N0 R0P=一定
と変形すると、シャルルの法則(圧力が一定のとき、気体の体積はその絶対温度に比例するという法則)が出てきます。これを使って計算してみましょう。
100℃(絶対温度で373K)の水蒸気が1リットルあったとします。この水蒸気の温度を200℃(絶対温度で473K)に上げます。すると、この水蒸気は膨張して、体積が大きくなり、473/373=1.27リットルに体積が増えます。どんどんどんどん、温度を上げていくと、どんどんどんどん体積が増えていきます。例えば、1000℃(絶対温度で1273K)にすれば3.4リットルになります。このようにして温度はどんどん上げることが可能になります。水泳に使うちょっとしぼんだ浮き輪を暖かい日向に置いておくとパンパンにはちきれそうなばかりに膨らむのもこのシャルルの法則によります。
さて、今度はもうちょっと式を変形して、
P/T=N/N0 R0V=一定
とします。この場合は体積が一定なので、水蒸気が何かの容器に閉じ込められていると考えてください。この容器は絶対壊れない容器だとします。こうして温度を上げていくと、圧力がどんどん上がり、しまいに水蒸気は分解して水素と酸素になります。更に温度を上げていくと水素と酸素は更に分解して、プラズマ状態になります。
最後に、別の形に変形すると、
VP=N/N0T R0=一定
となり、ボイルの法則(温度が一定のとき、気体の体積は圧力に反比例する)がでてきます。
理想気体の状態方程式を使うと、気体の温度や体積、圧力の関係があらわされているので、いろいろな計算ができます。自分でやってみると面白いかもしれません。