【科学のつまみ食い】

月って本当に自転しているの

by I-satto@04/07/06

2004年1月17日に30歳代の男性、1月24日には埼玉県の54歳の男性から似たようなご質問を頂きました。

 

月の自転について分からない(納得できない)ことがあります。

 初めてお便りさせていただきます。大変興味深く拝見させていただきました。
 実はこちらのホームページにたどり着いたのは、"どうして月の裏側は地球から見えないのか?"というヘッポコ論議を妻としていたときに、私自身ちょっとひっかかる点があり、そのことを調べようとしたのがきっかけです。

 妻との話は、"月の公転周期と自転周期が同じだから、常に同じ面しか地球側からは見えないんだよ。"ということで決着がついた(?)のですが、私がコップやお皿を使いながらその説明をしているときに、こういう考えが浮かびました。

"地球と月の関係は、ハンマー投げの選手とハンマーの先についている鉄球との関係と同じ(だと思います。)だが、はたしてこの鉄球は自転しているといえるのだろうか?"
  もしくは、
"中華料理のときに使うターンテーブルの中心におかれたボール(地球)と、ターンテーブルの縁側におかれたボール(月)の関係で、縁側におかれたボール(月)は自転しているといえるのだろうか?"
  もっと極端になると、
"地球の中心から見ると、私たちは(逆立ちしない限りは)足の裏しか見せていないことになるが、これはつまり私たちは自転しているということなのか?"

・・・等々、類似する例はいくらでも考えつきます。

どの空想実験においても、地球と月の関係を実現できていると思うのですが、どれも月側の役目を果たすモノ(鉄球もしくは縁側におかれたボールもしくは私たち)は、自転しているようには思えません。特に3例目などは、バク転している人は自転していると説明された方がよっぽど納得できます。

私の"自転"というものに対する定義が間違っているのか、どれも例外と見なされるものなのか、逆に偉大なる問題提議なのか分かりませんが、とにかくこのままでは無理矢理納得させた妻に対し
ても罪悪感が拭えません。

このようなメールを送りつけるのは不躾なことは承知の上ですが、たぶん同じことで納得できないでいる方は私の他にも大勢いらっしゃるのではないかと思います。

もしもこのようなつまらないことに時間を割く余裕がおありでしたら、またホームページに掲載していただくとありがたいです。

乱筆、乱文お許しください。
2004.1.17 30代の会社員より
 

月の公転周期と自転周期

表題の件に関しての解説に疑問を持ったので、眞に勝手ながらメールいたしました。

月がいつも同じ面を地球に向けているのは、月が「自転していないから」と私は考えていました。
ちょうど、ゴルフボールに釘を打ちつけ、糸を結び付けそれを手に持ち回転させると、釘がいつも回転中心である手の方を向いているのと同じ、と認識していました。

自転を「物体を通る軸の回りを回転すること」「回転慣性モーメントが生じていること」と定義するなら、ゴルフボールはボールの中心軸に対し回転していません。もし、自転しているなら、糸が切れてもボールは自転しながら飛んで行くはずですが、そうはなりませんよね?

同じように、今地球が消滅したとしたら、月は周回軌道の接線方向に自転を伴わずに飛んでいくと思います。つまり、(地球の)周回軌道にのるということは、「物体の地軸自体が向きを変えられる」ということなのではないでしょうか?それは、自転とは異なるのではないですか?
もし御説が正しければ、地球も太陽に対し同じ面を向けていなければならないはずですから。

1/24 埼玉県 


メールありがとうございます。
現在多忙のため、質問コーナーは閉鎖しているので、時間の都合上、簡単にご説明します。

思考実験(通常、空想実験ではなく思考実験といいます)は、おっしゃるように地球と月の関係を実現していますね。このように、思考実験を重ねることは楽しくもあり、時間がたつのを忘れてしまうものです。


さて、まず結論から言いますと、奥様との議論の決着のとおり、
「月の公転周期と自転周期は一致していて、月は自転している」ということです。

 次に、
自転の定義ですが、「物質が回転によって、その物質自身に遠心力が働く状態」と理解していただければいいと思います。
 例えば、
(1)ロケットが直進運動していて、90度向きを変えて曲がって飛んでいったときは、方向転換とともに90度だけ自転しています。
 逆に、
(2)直進運動をしているロケットが、平行に移動した場合、ロケットは向きを変えず、遠心力も働かないため、自転はしていません。

 実際、
ロケットの中に「洗面器の水に浮かべたマッチ棒」を設置します。
(1)の場合、ロケット内の人は遠心力(回転の加速度)を感じるとともにマッチ棒が回転することを観測し、ロケットが自転したことを認識します。
(2)の場合は
ロケット内の人は遠心力は感じずマッチも回転しないことを観測するでしょう。



このように
(1)のように内部で遠心力を感じるように地球の周りを回ればそれは自転していますし、
(2)のように地球の周りを回れば、自転していないのです。
遠心力が働くことが自転していることですから、いずれの思考実験も自転になります。

実際に月が自転していることを示すには
コリオリの力がつきで働くか否かを調べれば判ります。

コリオリの力については、
お風呂の水を抜くときの渦は(コリオリの力)  コリオリの力の実験方法は?を参考にしてください


 

 


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