【科学のつまみ食い】
水滴を一定の大きさ(量)で落下させる方法は?
(簡易ビュレットの作り方)

 

by I-satto@02/10/03

2000年1月22日に小学3年生の女の子のお母さまからご質問を頂きました.。

 濃度の異なる砂糖水を油にたらし、落下時間を濃度ごとに計測しようとしています。
当然水滴の大きさを一定にしなければなりませんが、スポイドではなかなか一定になりません。水滴の大きさをそろえるための、いい方法はありませんか?

 


 こんにちは、ご質問ありがとうございます。

 油の中に砂糖液を落下する実験ということは、落下速度と、粘性(表面張力)抵抗の関係を測定するのですね。大きさによって落下速度が異なったり、重力で落下するのに油の抵抗のために落下速度が一定になったりします。この原因を考察するといろいろなことが判ってきます。

 さて、スポイトは押し加減によって水滴の大きさや落下する時間間隔を調整することがなかなかできないので大変です。特に、プラスチック製の簡易スポイトは非常に難しくなります。このように水滴を一滴筒たらす実験、例えば「ビタミンCでヨード液の色が変わる理由」で行っているような敵定分析などもそうですが、通常ビュレットを使用します。ビュレットは見たことがありますか? ビュレットは滴定の時に主に用いられ、加えた溶液の体積をはかるために用いる化学実験用の器具で、普通、目盛りの付いたガラスの直管で、先が細く、その先にコックがついていて、そのコックのあけ方を加減することで、溶液を小さい滴としてある一定の時間間隔で落とすことができるようにしてあるものです。スポイトのゴムの無いものはピペットと呼ばれますが、それにコックがついたような形をしています。購入すると1万円近くしますので、もし、学校で借りられるのならば、理科の先生にお願いしてビュレットとビュレットスタンドを借りましょう。ビュレットがあることで、この実験はかなり正確な実験ができるようになります。

 もし借りられなければ、次の方法を試してみてください。

 細い針を用意します。
 その針をスタンドに固定します。
 スポイトや筆などで、液を針の上からたらします。できるだけ少ない量にしてください。
 針の先に水滴がたまります。
 ある一定量たまると落下します。
 この量は、たらす液の表面張力の大きさによって異なります。即ち、液の粘性(ショ糖液の濃度)によって異なります。

 非常に大変ですが、ほぼ一定量の水滴が落下すると思います。
 コツは、針にできるだけ少ない量の液をたらすことです。

 例えば、10回針に液をたらして、一滴落ちる程度だと、誤差は10%程度になります。
 ビュレットを使うことから比べると非常に大変です。

 できれば、ビュレットを借りましょう!!

 


と書きましたら、以下のようなお返事を1月25日に頂きました。

お返事ありがとうございます。生憎ビュレットは借りられないと思います。なぜって、娘は小学校3年生ですから、でも、その代わりの方法を教えていただきましたのでトライしようと思います。
機会があれば結果を、お知らせできればと思います。



そこで、簡易ビュレットを作る方法を考え、メールを送りました。以下に簡易ビュレットの作り方を書きます。

【簡易ビュレットの作り方】

 もっとうまくいく方法として簡易ビュレットを、簡単に安く(1000円以下)作る方法を考えました。実際に作って確認したので、うまく使えると思います。材料は全て熱帯魚屋さんでそろいます。。

用意するもの

スポイト(ピペット)
   できればゴムが外れるものがよいです。30cmくらいの大型のもので、熱帯魚に生餌を与えるために作られているものが500円くらいで安く売られています。ガラス製である必要は無いです。逆にガラス製でないほうがいいかもしれません。ゴムが外れなければ、上の膨らんでいる部分を切ってしまいます。
三又分岐
    熱帯魚などにエアーポンプで空気を送り込むときエアチューブを分岐するもの空気量調整のバルブがついているもの200円くらいで売られています。重要なのはバルブがついていることです。
エアチューブ
    熱帯魚にエアーポンプで空気を送り込むときに使用するチューブで短くていいです。100円くらいで売られています。


 
作り方
 さて、エアチューブを2〜3cmくらい切って、一方を三又分岐のバルブの付いていないほうに取り付けます。

もう一方をスポイトの先端に取り付けます。ゆるくても奥まで差し込めば大丈夫です。

これだけで、完成です。

使い方
 スポイトを縦にした時に三又分岐の真下の出口以外のバルブは全て閉じておきます。使用するバルブはスポイトの真下のバルブだけで、これの開閉で水量を調節できます。
 ゴム付きのスポイトの場合には、ゴムをつけた状態で、真下のバルブをあけて、必要な水溶液を吸い上げます。この後、バルブを閉めて、スポイトのゴムを取りはずします。このスポイトを縦にして固定します。後はバルブを開くだけです。このときバルブの開き加減で水滴の出る速さが変わりますので調節してください。
 ゴム付でないスポイトの場合には、スポイトの上の膨らんだ指先で押す部分を切り取ってしまいます。必要な水溶液は別のスポイトで上から入れます。あとは、ゴム付きのスポイトと同じように使用できます。

注意
 樹脂製スポイトと樹脂製のエアチューブ、金属(ステンレス)製の三又分岐を使用しているために強い酸強いアルカリシンナーなどの有機溶媒は、樹脂や金属を溶かすものは使用できません。


ぜひ作ってみてください。
 


 

 

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