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by I-satto@03/11/09
2003年7月04日にご質問を頂きました.。
生物の実験でオオカナダモを使用する理由は何ですか?
オオカナダモの特徴や性質、海外から輸入された理由等出来るだけ多くの事を詳しく
教えて下さい。
これは、なかなか難しい質問ですね。まず、オオカナダモがどのような実験に使われているか考えて見ましょう?
1.光合成の実験
2.呼吸の実験
など、植物の生理に関する実験に多く使われます。さて、植物生理の実験はどのように行われるでしょうか?
まず、光合成の実験では、温度による光合成の影響の実験方法は?で説明しているように、酸素が出たことを気泡の数で数えます。同様に、呼吸の実験でも同様に出てくる気泡の数を数えるのが簡単です。空気中では出てくる気体の量を測るのは容易ではありません。このように水生植物は気泡の数を数えることが容易であるために植物生理の実験に多く使われるのです。このため、水生植物であるオオカナダモはこのような実験に適していると言えます。
また、 通常、実験に使われる植物には以下のような条件を満たしているものが多いようです。
1.手に入りやすいこと
だれでも、同じ実験ができます。これは、実験の検証のためには必要なことです。
2.値段の安いこと
色々な比較実験をするときは大量に生育しなければなりませんので、値段が安いことが必要になります。
3.大きさが手ごろであること
小さすぎるのは、観察が大変ですし、大きすぎるのも大変です。実験スペースの問題などもあります。
4.強い光を必要としないこと
一般的に、実験室で実験を行う場合は、あまり強い光を与えることはできません。室内では光が少ないので、室内程度の光で育てられる植物が適当です。
5.早く成長すること
植物の成長実験は時間がかかります。できるだけ短期に、外界の影響を受けない実験をするためには、なるべく成長速度が速いほうがよいです。
オオカナダモは水生植物で植物生理の実験がしやすいことと、上の条件を満たしているので、植物生理の実験によく使われるのだと思います。
さて、オオカナダモとはどのような植物でしょうか?
オオカナダモはカナダモの仲間です。カナダモの仲間には、カナダモの他、コカナダモとオオカナダモがあります。これらは、どれも上に述べたような実験に使用されます。
カナダモは原産が、北アメリカでトチカガミ科の水生植物です。19世紀にヨーロッパ各国の水路に帰化して急速に広がりました。この現象は water pest(水のペスト)と呼ばれています。日本に野生化しているのは、カナダモではなく、下に述べる近縁のコカナダモが多いようです。雄花にも花弁があって、花柄は切れず萼筒が伸びることがコカナダモとは違います。
コカナダモの原産は北アメリカ東部で沈水性の多年草です。日本には昭和の初めころ雄株だけが帰化しました。雄花だけなので、繁殖は栄養繁殖によっています。茎は水中を伸ばし、各節に2〜4枚ずつの葉を輪生します。葉の縁に細かい鋸歯があって、5〜6月に葉腋の苞比の中に1個の雄花をつけます。雄花は花柄が切れて水面に浮かんで、開花します。小さい萼片が3枚、花弁はなく、おしべが9本あります。雌株は日本には自生していませんが、雌花は萼筒が伸びて水面にまで達して開花します。萼裂片が3個、白色の花弁が3枚、仮雄蕊が3本と花柱が3本あります。雄花と雌花があれば、切れた雄花が水面を流れて雌花の花柱につき、受粉が行われます。
ここで話題になっているオオカナダモはアルゼンチンの原産で、これもコカナダモと同様に雄株だけが日本に帰化して、栄養繁殖をしています。帰化したのはコカナダモより古く、大正時代といわれています。葉は各節に3〜6枚ずつ輪生し、1個の苞比内に雄花のつぼみが2〜4個できて、順々に開花していきますが、1日でしぼんでしまいます。開花時には萼筒が細長く水面まで伸びます。3枚の花弁があって、白色で内側の基部は黄色をしています。