【科学のつまみ食い】  
宇宙の年齢は?

 

by I-satto@03/11/24

2000年6月1日に 男性より、ご質問を戴きました。

はじめまして 以前から疑問に思っていることがあります
http://www.sankei.co.jp/databox/paper/9708/html/0831side27.html(現在はリンクがありません)
上記のURLによると宇宙の年齢は90〜120億年と言われていますが90〜120億年昔の光を観測しているのだから今現在の宇宙の年齢は少なくともビッグバン〜(地球〜(90〜120億年星離れた星))の距離の倍の180〜240億年以上になっていると思いますがいかがでしょうか
それとも90〜120億年とはそうした計算をした結果なのでしょうか?

突然で失礼とは思いますがよろしくお願いします

 


ご質問ありがとうございます。
現在超多忙なもので、お返事が大変遅くなって申し訳ありません。

 まず、宇宙の年齢の測定方法についていくつかありますが、最も、一般的で判りやすいのはハッブルの法則を用いることでしょう。
 ハッブルの法則とは
 遠方の銀河(星雲)は、その銀河までの距離に比例する速さでわれわれから遠ざかっている
という法則です。このことより、遠くにある天体は近くにある天体よりも速く遠ざかります。光は波ですので、ドップラー効果(波の発生源と観測者が近づきつつあれば振動数は高く、遠ざかりつつあれば低くなる。光の場合には両者の相対速度だけで振動数の変化が決まる。)により、遠くにある天体と近くにある天体が同じ光を発生している(原子から出る固有の光など)とした場合に、遠くの天体は近くの天体よりも速く遠ざかっているので、遠くの天体が発するもともと同じ原子から出た光は、近くの天体が発する同じ光よりも赤くなります。このことより天体の距離を推定できます。
 このようにして推定した最も遠い天体が、おっしゃるように約90〜120億年前の光を観測していることになり、その距離は約90〜120億光年となります。

 ご質問の内容は

1.宇宙の果てである最も遠い天体が地球から約90〜120億光年離れているのならば、宇宙の広さ(最も離れた天体と最も離れた天体の距離)はその倍の約180〜240億光年になるのではないか? そうすると、ビックバンを起源とする宇宙の年齢は、それと同じで約180〜240億年になるのではないか?

2.宇宙の果てである最も遠い天体を光で測定した場合、90〜120億年前の光を観測しているのだから、観測した時点でその天体は更に90〜120億年分、遠ざかった距離の180〜240億年分遠くにあるのではないか? そうすると、ビックバンを起源とする宇宙の年齢は、それと同じで約180〜240億年になるのではないか?

という二つの質問のどちらか だと思います。

そこで、について考えて見ましょう。

1.についての解答

 素直に考えればそうなります。しかし、宇宙はわれわれが住む(感じている)3次元の空間(縦x横x高)ではないと考えられています。それに時間の次元を加えた4次元の時空間(縦x横x高x時間)であると考えられています。こういう空間は想像しにくいので、次元をひとつ減らして考えます。

 われわれの宇宙が次元をひとつ減らした3次元の時空間であると考えます。空間が2次元(立体ではなく平面)で時間が1次元と考えます。ちょうど風船にたとえられます。風船の表面は2次元ですよね。左の図のように、これを空間と考え、もうひとつの時間の次元は風船の表面に垂直な方向を考えます。この風船表面が宇宙空間と考え、風船の表面にマジックで点をいくつか打ってみます。これがそれぞれの星(天体)です。このひとつが地球であるとすると最も遠い天体は、この風船の裏側にある天体です。その最も遠い天体が120億光年離れているとした場合、宇宙(風船)の広さは、どのように考えればよいでしょう?最も遠い天体管の距離は、やはり120億光年ですね。このように考えると宇宙の起源であるビックバンから現在までの時間は120億年となります。

 このように、われわれが住む宇宙空間というのは風船の表面のようなものと考えられています。ビックバンはこの風船が膨らむ前のしぼんだ状態、しかも点の状態から、一気に風船が膨らんで広がっている状態だと考えてください。そうして、われわれは風船の中ではなく表面に住んでいるようなものだと考えれば納得がいくのではないでしょうか?

 最後に地球は決して宇宙の中心ではありません。上の風船の話からもわかるように風船の表面にちりばめられた星々はどれも中心であり、どれも端っこです。宇宙空間の中心という考え方はできないのです。
 

2.についての解答

 さて、この場合も素直に考えると、そうなります。120億光年彼方のことを観測しているということは、120億年前のことを観測しているといっても差し支えありません。従って、120億光年彼方の物体の現在のその姿を観測しようとすると、その後の120億年たったときに観測しなければわかりません。そこで、120億年後に観測すれば、確かに宇宙の広さは240億光年になっているかもしれません。しかし、最近の研究では宇宙の膨張速度は加速しているとも言われてますし、宇宙の質量によっては膨張から収縮に転じている可能性もあります。従って、現時点で120億年先のことを論じることは無理があります。

 これを、性格に述べると次のようになります。
 現在観測すると120億光年彼方のことはわかりません。見えないということが正しいのです。従って、今という時間に120億光年先で起こったことは120億年たって、伝わって、われわれが確認できることになります。これは、同時性の問題になります。通常、われわれは時刻が同じ場合に同時としています。しかし、相対性理論によれば、上で述べたように、われわれは空間3次元+時間1次元の4次元の時空間に住んでいて、この時空距離が0の場合を同時とします。ます。これは、時間t、位置x、y、z、光速度をcとしたときに、時空間距離s

         s=x+y+z-(ct)

で、あらわされます。

 たとえば、上の図の様に300m離れて電球を持った人A光を受信する装置を持った人Bの二人の人が立っています。Aの人が電球のスイッチを入れると、Bの人は100/c秒後にその光を受信します。実際これを計算すると、1μs(1x10-6=0.000001秒)後になります。これは、ほんの一瞬ですね。二人の人間A,Bにはこの300m先で起こったことは互いに同じ時刻という意味で同時に見えます。この同時について上の時空距離を計算すると、同じ時刻という意味での同時、即ち、時刻が0であれば、
 x+y+z=300=90000
 
(ct)=0
で時空距離は
 s=90000
で、同時ではなくなります。時刻を。1μs(1x10-6=0.000001秒)とすれば、この時空距離が0になり同時となることはわかりますね。

同じことを、120億光年について論じれば、時間差が0の時にその時空距離は
 sx+y+z=(12000000000x300000000)
となりますが、120億年後に観測されることを計算に入れると時空距離は
 (ct)=(300000000x12000000000)
となるので、時空距離は
 s=0
となり、120億光年離れた場世に対する同時とは120億年前のことを観測することになるのです。

このように、ちょっと判りにくいですが、同時性の概念を相対論で論じれば現在の宇宙の広さは120億光年ということになります。

 

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