【科学のつまみ食い】
人間の体って何であんなに細かくできているの?

 

by I-satto@02/11/05

2000年6月28日に 中学2年生の女の子からご質問を頂きました.。

 人間の体は、なんであんなに細かくできているの??
どうやってあんな形になったの??
(うずまきかんとか??)

 


 ご質問ありがとうございます。

  さて、人間の体が細かくできている理由ですが、これは人間に限ったことではありま せん。すべての生き物が精密で複雑な器官をもっていて、調べれば調べるほど生物の 不思議さ、すごさがわかってくると思います。

 たとえば、単細胞生物(原生動物アメーバにしたって、ひとつの細胞なのに、偽足という 足(アメーバーが池の中の枯葉などの表面をはって歩くとき,体の前のほうから細胞の一部分を突き出して枯葉などの表面に接着しながら進みます。この突き出した部分があたかも足のように見えることから偽足とよばれます。)を出して、移動したり食物を確保して取り込んだりします。光や温度に反応して、 移動したりもします。生物は本当に不思議で偉大なものだと思います。

 人間の体もアメーバと同じように細胞でできています。その細胞が非常にたくさ ん集まって人間というひとつの生物を作り上げています。多くの細胞からできている ことから人間などは多細胞生物と呼ばれます。アメーバーなどの単細胞生物はひとつ の細胞で足や手にあたる偽足を作り、それで、移動したり、食物を取り込んだりしま す。口が無いので細胞が直に栄養を取り込みます。偽足等を出すことは無いですが、 人間の細胞も同様にして、細胞が血液から直接栄養を取り込んでいるのは同じです。

 しかし、人間の細胞はアメーバーなどの単細胞生物と違って、それぞれの細胞がそ れぞれの役割を持っています筋肉になる細胞、耳になる細胞、目、脳、口、消化器 官などの内臓、それぞれの役割を持っています。これは、生物の進化の過程で、周り の環境や、周囲にいる他の生物との関係で、より合理的に生活できるように、より合 理的に子孫を残せるように何万年何億年もかけて変化していったためです。このよう に進化していった過程で今のような人間やその他の生物が出来上がっています。
 簡単な構造をもつものから複雑な構造をもつものへ進化していったと考えられま す。たとえば、周りにある機械でもどんどん複雑になっていきますね。 そのほうが、いろいろなことができて便利になります。
たとえば、TVを例にとると

 白黒TV→カラーTV→リモコン付TV→ビデオ付TV→衛星放送TV→ハイビジョンTV→インターネットTV
など、どんどん変わっていき複雑になり、便利になってきています。 このように、生物も回りの環境によって、変化、進化を遂げ、今のように細かい(複 雑な)人間が出来上がっています。
  ところで、人間の器官の細かさ(複雑さ)にはそれぞれ、意味があります。ここで、す べてについて書くのは不可能ですの、例にあげられた「うずまきかん(渦巻管、蝸牛管(かぎゅうかん))」の役割につ いて考えるために、耳の仕組みについて書いてみます。

 耳は外耳、中耳、内耳の三つの部分からなっています。 外耳炎とか中耳炎、内耳炎など、耳の病気になるときに聞く言葉ですね。


 このうち、外耳軟骨とそれをおおう皮膚から成って集音器の役割を果たす耳殻 (じかく)(耳介(じかい)とも呼ばれますが、いわゆる耳たぶです。)と耳の入り 口から鼓膜までのS字状に曲がった管で、共鳴腔(音を共鳴(ひびかせる)ための空 洞)として働く外耳道(外聴道(がいちょうど)とも呼ばれる)からなっています。 外耳道はいわゆる耳掻きで掻く部分ですね。

 さて、中耳は外耳と内耳との中間にあり、鼓膜鼓室耳小骨エウスタキオ管か らなっています。その役割は外耳を通って入ってきた音が厚さ0.1mmほどの卵円形を した鼓膜を振動させ、この振動が鼓室内にある三つの耳小骨(つち・きぬた・あぶ み)の連結を介して内耳に伝えられるしくみになっています。ここで、耳小骨は関節によりつながっていて、鼓膜の振動を内耳に伝える役目をし ています。また鼓膜の緊張や耳内圧(耳の中の圧力)を調節するやくめもあります。そ の形からそれぞれ槌(ツチ)骨・砧(キヌタ)骨。鐙(アブミ)骨等と呼ばれています。エウスタキオ管は耳管とも呼ばれ、中耳の鼓室から咽頭壁(のど近くにある壁)に 通じる扁平な管で、普通は閉まっていますが、食物を飲み込むときとかあくびなどを したときに開き、中耳内の気圧を調節します。トンネルに入ったり、飛行機で離陸し たり着陸したりするときに耳の中が痛くなるのは、急激な気圧変化のために、中耳内 の圧力が、外の圧力と異なるためです。このときエウスタキオ管が開くと外と中耳の 圧力が同じになるので、耳の痛いのが直ります。飴を舐めていると良いのも、舐めて いるときにエウスタキオ管が開くからです。

 最後に内耳ですが耳の最も奥の部分にある器官で、複雑な形の骨に包まれていて、 内部にほぼ同形の膜のような構造物があります。半規管(三半規管)前庭渦巻管(蝸牛管)に分けられて いて前の二つは平衡感覚を、最後のひとつは聴覚を感受する仕組みになっています。  半規管は人間の場合には三つの半円形の管から成るので、三半規管といいますが、 それぞれの内腔(内側の空洞)を満たすリンパ液の動きにから、回転および前後左右上 下の加速運動を感知することができます。


 さて、問題の渦巻管ですが、渦巻管は巻貝状の骨性の管でその断面は三角形をしています。人間の場 合にはおおよそ2巻半の渦巻きになっていて、その内部は膜によって三つの部屋に分 けられていて、それぞれがリンパ液という液体で満たされて鼓膜の振動を伝えていき ます。中央の部屋を渦巻細管といい、聴覚の中心となっています。この渦巻細管は、 中耳で増幅された音波を、内腔(ナイコウ)のリンパの振動に変えて有毛細胞(毛が生えている細胞です)を刺激 し、興奮を蝸牛(かぎゅう)神経に伝達します。この神経から脳に伝わり、音が聞こ えたと思うのです。

  このように、耳ひとつをとっても集め共鳴させ、増幅させ、伝え、神経を刺激 させという過程を経て音を聞きます。簡単に音を聞いているようですが、 細かい音や、高い音、低い音等を聞き分けるために複雑で細かい器官が必要になるの です。
 


 

 

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