【科学のつまみ食い】

月の自転と公転周期が一致している理由

by I-satto@05/02/12

1999年8月20日に中学1年生の男の子から質問を頂きました。自由研究課題に「7/28部分月食の観測」を取り上げました。
観測前、月食がしょっちゅう起きない理由を月の公転速度が不規則だからと予測しましたが、正しくは黄道・白道の角度のずれのためであることが分かりました。こちらのホームページも参考にさせていただきました。月食のことを調べる中で、月の公転周期・自転周期が同じため地球からは月の同じ面しか見えないことが分かりました。では、なぜ月の公転周期と自転周期は同じなのでしょうか?また、月・地球の公転周期・自転周期はこれからも変化しないのでしょうか?教えてください。よろしくお願いいたします。


  夏休みの自由研究に月食の観察を取り上げたのはよい研究です。月が地球の影(半影)に隠れ始め薄暗くなり本影で本当に隠される姿をちゃんと観測できましたか?私の住んでいるところでは、あいにく天気が悪く月食の観測をできませんでした。本当は月食を写真にとってホームページに掲載したかったのですが、ちょっと残念です。
  月食が毎月起きないのは日食と同じで、地球の公転軌道(天空の黄道)と月の公転軌道(天空の白道)が5.1度ほど傾いているからですね。さすが中学生ですね黄銅、白道という言葉を理解していますね私のホームページにちょっと書いてありますが、これがちょうど交わるのがほぼ年2回あります。したがって、年2回はどこかで見られることになります。

 さて、ではご質問の
「月の自転周期が公転周期と同じ理由」ですが....
これは、潮汐力(起潮力)のためなのです。潮汐力については、私のホームページの 「若潮、長潮と月の関係は?」に簡単に説明してあるので参考にしてください。この潮汐力は、地球に働いて、潮の満ち引きを起こしていますが、この力は月にも同じように働いています。地球からの引力により月の地球に近い面は引っ張られます。逆に月の地球から遠いほうは遠心力で地球から離されます。この力は公転周期よりも速く自転している場合にはブレーキになり、公転周期よりも自転周期が遅ければ加速しようとします。そうして、ついには公転周期と自転周期はいっしょになってしまうのです。

ということで、もうひとつの質問
「月・地球の公転周期・自転周期はこれからも変化 しないのでしょうか」の答えもいっしょで月の自転周期はいつまでも公転周期と同じです。

では、
同じようなことが他の星でも起こっているのでしょうか?
答えは
YESです。

たとえば、火星の2つの衛星フォボスとディモスも月と同じように公転周期よ自転周期が一致していて、それぞれ0.319日、1.262日です。また、ガリレオが発見した有名な木星の衛星、イオ、エウロバ、ガニメデ、カリストも同じように公転周期と自転周期は等しく、それぞれ1.769日、3.551日、7.155、16.69日です。他の惑星の衛星も公転周期と自転周期が一致しているものが多いです。これらの惑星にある衛星は月と同じように何時も同じ面を母星に向けています。現在判っている自転周期と公転周期が一致している衛星の一覧表を以下にあげて起きます。

 

番号 衛星名 発見者 発見年 光度(等) 軌道の長半径(万km) 公転周期(日) 自転周期(日) 離心率 軌道傾斜(度)   半径(km) 質量(母惑星=1)
地球1 Moon - - -12.6 38.44 27.3217 27.3217 0.0541 5.1 横道面 1738 0.012300
火星1 Phobos Hall 1877 11 0.9378 0.3189 0.3189 0.017 1 火星の赤道 13x11x9 2.0x10-8
火星2 Deimos Hall 1877 12 2.3459 1.2624 1.2624 0.0031 1.7 火星の赤道 8x6x5 0.3x10-8
木星1 Io Galileo 1610 5 42.16 1.7691 1.7691 0 0.03 木星の赤道 1821 4.70x10-5
木星2 Europa Galileo 1610 6 67.09 3.5512 3.5512 0.0003 0.47 木星の赤道 1565 2.53x10-5
木星3 Ganymede Galileo 1610 5 107 7.1545 7.1545 0.0015 0.18 木星の赤道 2634 7.80x10-5
木星4 Callisto Galileo 1610 6 188.3 16.689 16.689 0.0075 0.27 木星の赤道 2403 5.67x10-5
木星5 Amalthea Barnard 1892 13 18.13 0.4982 0.4982 0.0028 0.4 木星の赤道 131x73x67 -
木星6 Himalia Perrine 1904 14 1148 250.57 0.4 0.158 28.44 木星の軌道 85 -
木星7 Elara Perrine 1905 16 1173.7 259.65 - 0.207 27.75 木星の軌道 40 -
木星8 Pasiphae Melotte 1908 16 2350 738.9 - 0.378 147 木星の軌道 18 -
木星9 Sinope Nicholson 1914 18 2370 758 - 0.27 157 木星の軌道 14 -
木星10 Lysithea Nicholson 1938 18 1172 253 - 0.14 28 木星の軌道 12 -
木星11 Carme Nicholson 1938 18 2260 692 - 0.21 163 木星の軌道 15 -
木星12 Ananke Nicholson 1951 18 2120 631 - 0.17 147 木星の軌道 10 -
木星13 Leda Kowal 1974 22 1109.4 239 - 0.15 26.7 黄道面 5 -
木星14 Thebe Synnott 1979 16 22.19 0.6746 - 〜0 〜0 木星の赤道 50 -
木星15 Adrastea Voyager II 1979 ? 12.89 0.2983 - 〜0 〜0 木星の赤道 10 -
木星16 Metis Voyager I 1979 ? 12.79 0.2949 - 〜0 〜0 木星の赤道 20 -
土星1 Mimas Herschel 1789 12 18.552 0.9424 0.9424 0.0201 1.5 土星の赤道 199 6.6x10-8
土星2 Enceladus Herschel 1789 12 23.802 1.3702 1.3702 0.0044 0 土星の赤道 249 1.3x10-7
土星3 Tethys Cassini 1684 11 29.466 1.8878 1.8878 0 1.1 土星の赤道 530 1.10x10-6
土星4 Dione Cassini 1684 11 37.74 2.7369 2.7369 0.0022 0 土星の赤道 560 1.85x10-6
土星5 Rhea Cassini 1672 10 52.704 4.5175 4.5175 0.001 0.3 土星の赤道 764 4.1x10-6
土星6 Titan Huygens 1655 8 122.185 15.9454 15.9454 0.0289 27.7 黄道面 2575 2.34x10-4
土星7 Hyperion Bond 1848 14 148.11 21.2766 - 0.1043 28.2 黄道面 180x140x113 2x10-7
土星8 Iapetus Cassini 1671 11 356.13 79.3302 79.3302 0.0283 17.6 黄道面 718 3x10-6
土星9 Phoebe Pickering 1898 14 1295.2 550.48 0.4 0.166 173.9 黄道面 110 -
土星10 Janus Pascu 1980 14 15.147 0.6988 0.6988 0.007 0.1 土星の赤道 97x95x77 4x10-9
土星11 Epimetheus Cruikshank 1980 15 15.142 0.6943 0.6943 0.009 0.3 土星の赤道 69x55x55 1x10-9
土星12 Helene Laques 1980 17 37.74 2.7369 - 0.005 0.2 土星の赤道 16 -
土星13 Telesto Reitsema 1980 18 29.466 1.8878 - 〜0 〜0 土星の赤道 15x13x8 -
土星14 Calypso 米国海軍天文台 1980 18 29.466 1.8878 - 〜0 〜0 土星の赤道 15x8x8 -
土星15 Atlas Voyager I 1980 ? 13.764 0.6019 - 〜0 〜0 土星の赤道 19x10x14 -
土星16 Prometheus Voyager I 1980 〜15 13.935 0.613 - 0.0024 〜0 土星の赤道 74x50x34 -
土星17 Pandora Voyager I 1980 〜15 14.17 0.6285 - 0.0042 〜0 土星の赤道 55x44x31 -
土星18 Pan Voyager II 1981 ? 13.357 0.575 - 〜0 〜0 土星の赤道 10 -
天王星1 Ariel Lassell 1851 15 19.124 2.5204 2.5204 0.0033 0 天王星の赤道 579 15.6x10-6
天王星2 Umbriel Lassell 1851 16 26.597 4.1442 4.1442 0.0011 0 天王星の赤道 585 13.5x10-6
天王星3 Titania Herschel 1787 14 43.584 8.7059 8.7059 0.0018 <0.1 天王星の赤道 789 40.6x10-6
天王星4 Oberon Herschel 1787 14 58.26 13.4632 13.4632 0.0006 <0.1 天王星の赤道 761 34.7x10-6
天王星5 Miranda Kuiper 1948 17 12.978 1.413 1.413 0.012 4 天王星の赤道 236 0.8x10-6
海王星1 Triton Lassell 1846 14 35.48 5.8768 5.8768 0 160 海王星の赤道 1353 2.89x10-4
海王星2 Nereid Kuiper 1949 19 551.34 359.9 - 0.75 27.5 海王星の赤道 170 4x10-7
冥王星1 Charon Christy 1978 19 1.913 6.3872 6.3872 0 0 冥王星の赤道 586 0.08

 

ところで、月は何時も同じ面を地球に向けているようですが、実はちょっと違います。地球に同じ面を向けながら微妙にゆれているのです。だから、月の裏側の端っこのほうをちょっとだけ見ることができます。これを光学秤動といいます。このゆれは月の公転軌道が完全な円ではなくて楕円だから起こることです。

現在、月は地球から1年間に3.5cmづつ遠ざかっています。これに従い、公転周期や自転周期が遅くなっています。

最後に、今までの話で気づいたと思いますが、地球も月から潮汐力を受けています。このため地球の自転は遅くなりつつあります。100年で1.48ミリ秒という小さなものですが、ブレーキがかかっています。

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