水面より水中のほうが進みやすい理由は(造波抵抗)?


水面より水中のほうが進みやすい理由は(造波抵抗)?

2000年7月11日に 高校3年生の男子生徒からご質問を頂きました.。
水棲哺乳類や船は、水面を進むより、水中を進む時の方が抵抗が小さいと聞きました。
その原因がゾウハ抵抗であるとも聞いたのですが、このゾウハ抵抗とはいったい何なのでしょうか?
また、ゾウハ抵抗が生じると、なぜ水中より水面を進む方が抵抗が大きくなってしまういのでしょうか?
お忙しいところ申し訳ありませんが、ぜひ教えて下さい。ヨロシクお願い致します


 こんにちは、ご質問ありがとうございます。

 水中や水面を進むときにはどのような抵抗を受けるか考えてみましょう。
 まず簡単に、水中を進む場合を考えます。
水中を進む場合は水から、粘性抵抗を受けます。この粘性抵抗は水中を進むとき、その表面と水がこすれて生じる摩擦抵抗水中に渦を作る造渦抵抗とからなります。
 さて、では水面を進む場合にはどうなるでしょう?
水面を進む場合には、水中の部分に対して、上で説明した、粘性抵抗(摩擦抵抗+造渦抵抗)を受けます。そして、水面の部分に対してはおっしゃる通り造波抵抗を受けます。
  では、造波抵抗というのはどういうものでしょう。
造波抵抗というのは、物体が水面を進行するときに,その物体は水に圧力を与えて押しのけます。このときに、水面には波ができますね。これはその物体が波を起こすという仕事をしていることになります。すなわち、波を起こすために物体はエネルギーを消費するのです。この波を起こすことのよる抵抗を造波抵抗といいます。
これら、水中や水面から受ける抵抗については、流体力学を使って解析をしますが、その物体の大きさ(形が同じで、大きさが大きくなっても抵抗は比例しない)進行速度によって大きく異なるために、一概には言えません。
 ただ、進行速度が大きくなると、粘性抵抗の増加率よりも、造波抵抗の増加率のほうが大きくなることが多いのです。そのため、高速で進む場合には水面を進行するより、水中を進行するほうが抵抗が少なくなることが判っています。
 例えば、進行速度が遅い大型タンカーが受ける抵抗のうち、造波抵抗は約10%と言われていますが。高速船等は造波抵抗の占める割合は50%にも達します。
造波抵抗フルード数
F=U/√gL
(U は進行速度g は重力加速度L は船の長さ)という無次限のパラメーターによって支配されていますが,このフルード数の増加とともにその造波抵抗は増しますが,その増加は一様ではなく,山と谷をもっています。これは、物体の色々な場所から発生した波が互いに干渉するために起こります。この干渉を上手に利用して波の山と谷とが重なるようにすれば,造波抵抗を小さくすることができます。船の設計にはそうした技術が使用されています。
また、粘性抵抗レーノズル数
Re=UL/ν
と定義される。νは動粘性係数
これをみると、どちらも物体の進行速度Uに比例して大きくなりますが、前に述べたように、Reの増加による抵抗力の大きさの増加に比べ、Fの増加による抵抗力の増加のほうが大きくなりますこれについては、流体力学による詳細な計算が必要で、簡単な式であらわすことはできません。もし、大学などへ行って、詳細に流体力学を勉強する機会があれば、もう一度勉強することになるでしょう。
 ちなみにフルード数0.10以下で進行する物体では造波抵抗はほとんどないのですが,フルード数0.30で進行する場合の造波抵抗は全抵抗の半分程度にも達します。このように造波抵抗は速度によって大きく変わります
 先ほど述べた速度が遅く長さの長い大型タンカーではフルード数はほとんど0に近いので,粘性抵抗を小さくすることがもっとも重要となります。逆に,高速で走行することによりフルード数0.25以上と大きくなるような高速船では、造波抵抗を小さくすることがもっとも重要になります。
 造波現象と粘性によって生じる現象の二つは物体のまわりに共存し,同じ流体の現象であるから,これら二つの相互干渉があるために、流体現象の中でももっとも複雑な 現象です。理論流体力学は,両者を同時に解析することはもちろん,それぞれ片方の現象だけでも完全に解析できる段階にまではまだ進歩していないのです。そこで,通常は模型実験によって実際に抵抗を計測することにより,実際の船の開発が行われています。 但し、最近はコンピューターの発達により、かなりの精度で、数値計算もできるようになってきています。

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