円筒に流れる電流作る磁場は?


電線に電流を流すと、電線の周りに、右ねじの法則(磁界方向)で磁界が発生すると習いましたが、電線の代わりに筒状の導体に電流を流した時、筒内の磁界はどうなりますか?筒の外側は右ねじの法則が成り立つとおもうのですが、内側は磁界が発生しないのか、右回りか、左回りか分かりません。 できましたらお教えください。

1999年11月16日に中学3年生の男の子からご質問を頂きました。


学校で右ねじの法則(アンペールの法則)を習ったのですね。学校で習ったのは、下の図の左側の様に電流の進む方向に対して右回りに磁界が発生すると言うことですね。

右ねじの法則

このとき電流の周りにできる磁場は上の右の図の様に電線から離れるとその距離に反比例してだんだん弱くなりますこれをビオ・サバールの法則と言い、電線に流れる電流をI とし、真空の透磁率をμ0とすると、電線からの距離Rの位置にできる磁場の強さ(磁束密度)Bは以下の式で表されます。

B(R)=μ0I/2πR 

さて、では2本の電線に同じ向きに電流を流したらどうなるでしょう?
答えは下の図の様になります。

電線が2本の場合

電線の回りには1本のときと同じように磁場ができます。そして、2つの電線の間の磁場は逆向きですこのとき、例えば、2本の電線のちょうど真中の原点Oの位置に作られる磁場は互いに打ち消しあってになりますこの原点Oから右によると上向きに左によると下向きになります。しかし、電線を通り越してRの位置だと、逆に下向きになります。では、y軸上の上のほう(P点)に行くとどうなるでしょうか?電線からの距離は同じなので上向き下向きの磁場は互いに打ち消されて右向きの磁場だけ残ります。このように、2つの電線からの磁場を合成して考えなければなりません。

さて、では、上下左右4本の電線に同じ方向に電流を流したときはどうなるでしょう?

間違った合成

一見上のようになりそうな気がしますが、違います。私も、最初勘違いしてしまいました(^^;;実際は、下の図の様に2本のときと同じように合成しなければなりません

正しい合成

この合成は直感的には非常に難しくわかりにくいです。磁場が右回りになるのか、左回りになるのか、はたまた0になるのか?中心部は0になることは、互いに向かい合った電線に流れる電流が作る磁場が2本のときと同じように互いに打ち消し合うことから、すぐにわかりますが、中心からずれたところではなかなか想像がつきませんね。

 そこで、下の図の様に考えます。

円筒の合成

 上の図の様に円筒を考えます。それぞれ、RBGY が作る磁場をx軸上の円筒の外側Sと円筒の内側Pにおいてどのように合成されるかを考えます。RYと、BGと、それぞれX軸に対して上下対象な位置にあります。その時、円筒の外側のS点に作られる磁場は、RYBGで横方向(X軸方向)の磁場を打ち消し合い、縦方向(Y軸方向)の磁場だけが残ります。これは、電流の流れる円周上のどの点についても互いに、上下対象な点が作る磁場は横向きの磁場が互いに打ち消し合うことから、上下方向の磁場だけが残ります。また、電流の流れる円筒は磁場を作る位置より常に右側にありますから、全て下向きの磁場を作ります。このことから、円筒の外側では右ねじの方向に磁場ができることがわかります。

 では、本題の内側の場合にはどうなるでしょう?円筒の内側のP点に作られる磁場を考えましょう。RBGY の上下の対象は先ほどと同じですが、P点Y軸と平行に引いた直線Lに対して、RYはP点の左側に、BGは右側にあることを覚えておいてください。ただし、左右の位置対象でなくてかまいません。RYの作る磁場は下方向(Y軸方向)になり、横方向(X軸方向)は打ち消されています。また、BGの作る磁場は同じく横方向(Xj軸方向)は打ち消し合っていますがY軸方向は逆向きの上方向になっていることがわかります。ます、この場合も先ほどの外側の場合と同じように、横向きの磁場は互いに打ち消し合って0になることが判ります。しかし、上下方向の磁場はRYBGでは互いに逆になっています。大きさは違いますが、直線Lに対して右にある(RY)か、左にある(BG)かで、向きが逆なのです。直線Lより右側の円周のほうが長さは短いですが、点Pまでの距離は近く強い磁場を作ります。逆に、直線Lより左側の円周は長さは長いが、点Pまでの距離は遠く強い磁場を作ることができません。実は、直線Lの右側に流れる電流が作る磁場を全て足したものと左側にある電流が作る磁場を全て足したものは同じ大きさになり、互いに反対方向になります。そうです。円筒内に作られる磁場は合成すると0になってしまうのです。

判りました?

さて、ついでにちょっと別の話をしましょう。右ねじの法則アンペールの法則言われるものです。その他に、フレミングの法則があります。フレミングの法則は電流の向きと磁界の向きと電磁力の向きを示す法則で、右手の法則と左手の法則があります。
右手の法則右手の人差し指・親指・中指をお互いに直角に曲げて、人差し指を磁場、親指を導体の運動の方向に向けると中指の方向が導体に生ずる起電力の方向を示す

フレミングの右手の法則

左手の法則人差し指・中指・親指をお互いに直角に曲げて、人差し指を磁場、中指を電流の方向に向ければ、親指の方向が電磁力の方向を示す

フレミングの左手の法則

さて、一番最初の2本の電線の場合、左の電線が右の電線の位置に作る磁界は下向きですね。電流は手前から奥へ、ですから、左手の人差し指を下に向けて、中指を手前から向こうに向けると、親指はどちら向きになりますか?
そう、左向きですね。右の電線には左向きの力が働きます。逆に左の電線には右向きの力が働くのです。そうです。この2本の電線に同じ方向に電流を流すとこの電線は引き合うのです。これは円筒になっても全く同じです。従って、円筒はつぶれようとします。

また、2本の電線に互いに逆向きの電流を流すと反発して電線は離れようとします。
このような電流や磁界、その運動についての勉強(電磁気学といいます)は非常に難しいですが、大切です。高校や大学へと進まれたとき、特に理系に進まれたときには、ぜひ必要となる学問ですからしっかり勉強しておきましょう(^^)


ここからは大学に入ってから習うことですので、読み飛ばしてもかまいません。本当に円筒に流れる電流の円筒内に作る磁場が0になるのかどうか確かめるために計算してみましょう。

 円筒状の無限に続く導体に電流を流した時に得られる磁場の強度を計算するのです。先ほどの上の図の様に円筒の半径を0、円筒に流す電流をIとします。このとき、円周上の単位長さあたりに流れる電流はi=I/2πr0となることに注意してください。今、点Bが点Sに作る磁場を考えます。 OB(半径r0に等しい長さ)とOS(長さr)が成す角を θOSの距離がなので、BSの長さRは以下の式で表されます。

R=√(r0sinθ)2+(r‐r0cosθ)2

さて、点Bが点Sに作る磁場は青い磁場B(r)ビオサバールの法則から以下の式で表されます。

B(R)=μ0i/2πR

i=I/2πr0

しかし、X軸方向は打ち消されてしまうことが前の話から判ってます。これは円筒の内部でも外部でも同じですから、Y軸方向の磁場だけを考えれば良いことが判ります。そこで、Bの作る青い磁場Y軸方向(H方向)の成分だけ考えれば良いです。そこで、青い磁場Y軸(磁場H)の方向の成す角をφとすると、このコサイン成分cosφを計算すれば良いことが判ります。即ち、青い磁場のコサイン成分

B(R)cosφ=μ0i/2πR cosφ

ところで、この角度φ∠BSOと等しいので、cosφは以下のようになります。

cosφ=(r‐r0cosθ)/ R         

   =(r‐r0cosθ)/ √(r0sinθ)2+(r‐r0cosθ)2

従って、青い磁場のコサイン成分

B(r)cosφ=μ0i(r‐r0cosθ)/ 2π((r0sinθ)2+(r‐r0cosθ)2)

となり、これを-π~πまで円周に沿って積分すれば、円筒状の導体によって点Sに作られる合成磁場を計算することができます。即ち、

∫B(r)cosφr0dθ=∫μ0i(r‐r0cosθ)/ 2π((r0sinθ)2+(r‐r0cosθ)2)dθ

 =Iμ0/2πr・(r-r0+|r-r0|)/2(r-r0)

ここで、(r-r0+|r-r0|)/2(r-r0)rr0の大小関係によって値が違います。即ち、

(r-r0+|r-r0|)/2(r-r0)=0   r<r0 円筒の内側

(r-r0+|r-r0|)/2(r-r0)=1   r≧r0 円筒の外側

従って、

∫B(r)cosφr0dθ=0      r<r0 円筒の内側

       =Iμ0/2πr   r≧r0 円筒の外側

となります。

そうです、円筒形の導体に流れる電流が作る磁場は、円筒内部では0で、円筒の外側では、円筒の中心に電流を流した場合と同じ磁場が作られます。これをグラフに表すと、下のようになります。 

 

円筒の内外の磁場のグラフ


2003年11月6日にメールを頂きましたの文末にご紹介いたします。
ちょっと調べ物をしているうちのそちらのコンテンツにたどり着きました。
そこで、以下のページに興味を持ち拝見させていただきました.。
「円筒に流れる電流作る磁場は?」
 その中で1度円筒の外側と逆向きの磁界が発生する書かれてその後に「円筒内に作られる磁場は合成すると0になってしまう」と訂正されていますね。
 たしかに、描かれている図の4点を合成すればお互いに打ち消しあいますが、問題が円筒ですので全周からの磁界の総和にしなければならないのでしょうか?特に、合成しようとしているP点に直行している円筒部分(P点に最も近い円筒部)からの磁場の影響を打ち消せるとは思えないのですが、いかがでしょう
別な言い方をするとP点に直行しているの磁界は他の部位全ての磁界で打ち消されないのではないでしょうか?
突然のこのようなメールを差し上げてしまいすみません。

 メールありがとうございます。お返事が遅くなって申し訳ありません。
さて、円筒を流れる電流の作る磁場ですが、このページの最後に「ここからは大学に入ってから習うことですので、読み飛ばしてもかまいません」に計算した例を載せてあるように、円筒内部では0で、円筒上で最も強くなります。もし、山下さんが大学生なら計算してみてください。
図のP点で左右方向に作られる磁場が打ち消されることはわかりますよね。
「B点が作る青の磁場」「G点が作る緑の磁場」
「R点が作る赤の磁場」「Y点が作る黄色の磁場」

はそれぞれ、横方向の磁場は打ち消しあいます。
これは、図の円筒の上の電流が作る磁場と下の円筒が作る磁場の水平方向の磁場が互いに打ち消しあうことを意味しています。
次に図のP点で上下方向に作られる磁場が打ち消されることを示さなければなりません。
これは、図に描いてあるように単純には行きません。1対1で点の作る磁場を対応させることができないのです。
したがって、直感的には判りにくくなります。そこで、円筒の作る磁場全体を考えるのです。
直線L より右にあるか左にあるかを考えます。
直線Lより右にある円筒部分は点Pに上向きの磁場を作ります。
直線Lより左にある円筒部分は点Pに下向きの磁場を作ります。

ここで直線Lの左側の円筒部分と右側の円筒部分の円周の長さを比べると左側の方が長いことが判ります。しかし、右側のほうが全体的に点Pに近いですね。これらをそれぞれ合計するとP点に作る上下方向の磁場の大きさは左側の部分と右側の部分で同じになってしまうのです。

P点より右側の作る上向きの磁場は
  磁場は強いが磁場を作る円筒の右側の円周の長さが短い
P点より左側の作る下向きの磁場は
  磁場は弱いが磁場を作る円筒の左側の円周の長さが長い


となり、結果としてつりあってしまうのです。
考え方のみ要約すると
 P点に対して上下方向の円周が作る磁場はそれぞれ、線対称の点が作る磁場の左右方向の成分がつりあう。
 P点に対して左右方向の円周が作る磁場は左右で円周の長さが違うこととP点までの距離が違うことを考慮して計算すると、上下方向の磁場の成分がつりあう。


ということです。

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